SUZUKI SUV LINEUP

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ヤマダマサノリ

ヤマダマサノリ

クルマがきっかけで出版業界に足を踏み入れ、フリーランスや社員の立場で自動車専門誌やライフスタイル誌を渡り歩きながら、
現在はフリーランスのディレクター、エディター、ライターとして活動。
さまざまなジャンルの題材を、さまざまな媒体でカタチにしている。2ドアクーペ好きの昭和生まれ。

2018年7月5日にフルモデルチェンジを果たした新型ジムニーシエラ。その独自性・信頼性を誕生の背景から考察する。

“本格四輪駆動のコンパクトカー”として

熱心なファンでなくても、ともすればアンチであったとしても、広く認められ、多くの人に愛されるクルマが世界には存在する。にわかに信じがたい卓越したオフロード性能を、他に比べるものがない小さなボディに内包したジムニーもまた、そうした1台といえるだろう。半世紀にもなる歴史が始まった1970年以来、全世界で285万台を販売してきた実績はそれを裏づけるものだ。

優れた悪路走破性能とコンパクトなサイズが評価され、林業をはじめとする道幅の狭い過酷な環境下で活躍を始めたジムニーは、現在では“働くクルマ”としてだけでなく、“遊びのクルマ”としても熱狂的な支持を得ているが、高い機能性=独自性は早い時期から海外の注目を集めてもいた。そうした事情もあって、1977年には800ccエンジンを搭載したジムニー8が誕生。

ジムニー8(SJ20)
F8A型 797cc 水冷4サイクル直列4気筒/新開発の4サイクル800ccエンジンを搭載。
ジムニー1000
F10A型 970cc 水冷4サイクル直列4気筒/当時のスズキにして最大の1,000ccエンジンを搭載。

1982年のジムニー1000を経て、1993年にはジムニーシエラの名が与えられることになった。

輸出というかたちで世界進出を果たしたジムニーは同時に、スズキにとって初めて海外生産を行ったモデルでもあるが、彼の地での使われ方も日本と基本的には変わりなく、険しい山間部でのパトロールカーや建設現場の作業車、ハンティング(狩猟)に代表される“アウトドアギア”として重宝され、インドではかつて軍用車として採用されていた時期もある。幅広いニーズに応えるためディーゼルエンジンやピックアップ仕様もラインナップし、世界中で活躍の場を広げていった。

ジムニーの歴史

排気量が大きいのは高速走行に余裕をもって対応するための選択であり、ゆえにジムニーシエラは“本格四輪駆動のコンパクトカー”と認知されるようになったが、時代とともに日本でも同様のニーズが出現。軽自動車規格のジムニーと普通登録車のジムニーシエラを展開するようになったのには、そんな背景があったのだ。

街乗りでも愛されるスタイルも大いなる魅力

いわゆる“街乗りコンパクトカー”としてのニーズは、ジムニーシエラのキャラクターがストイックからタフネスな方向へと変化してきたことと無縁ではないだろう。フルモデルチェンジに限らず、幾度もの改良のたびにコンフォート性能が着実にレベルアップを果たしてきたからだ。さらにいえば、頼もしい存在感がファッション性と結びつき、ライフスタイルカーとして支持されるようになったことも理由のひとつに違いない。

心のおもむくままに走る歓び。ジムニーシエラには、その自由がある。

20年ぶりとなる今回のフルモデルチェンジに際しては、本格四輪駆動車のDNAであるラダーフレーム、前後3リンクリジッドアクスル式サスペンション、機械式副変速機付パートタイム4WDを継承しながら、心臓部には街乗りでも高速道路でも余裕ある新開発の1.5ℓエンジンを採用。走行時の安定性を一段と高める前後トレッド幅の拡大、それにともなうオーバーフェンダーは、ヘビーデューティーを進化させたスクエアなフォルムに理想的な、視覚的な安定感を与えることに成功しているといえるだろう。

国内外を問わず、働くクルマ、遊びのクルマ、ライフスタイルカーとさまざまな顔をもつに至ったジムニーシエラの、機能性を突き詰めたメカニズムと現代性を踏まえたデザイン。独自性のひと言に集約される魅力は、やはり唯一無二というほかない。

文/ヤマダマサノリ

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新型ジムニーシエラ
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心を解き放ち、自由を楽しむ。
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