目的
リーダーの提唱した“みんなのワクワクだらけの魔改造”を達成すべく、Sズキのエンジニア達は数多くのアイデアを出し、具現化すべく活動した。
この結果、“夜会”に連れてゆくことが叶わなかったモンスター、“お留守番モンスター”達が大量に誕生した。
本報告書では、“お留守番モンスター”達の調査結果を報告し、皆様へワクワクの共有を行う。
進化の系譜
Sズキが開発したモンスター達の系譜図である。夜会終了後の調査で、生贄発表から納期までの約5週間で様々なアイデア・モンスターが誕生した事が明らかとなった。自由な発想による発散と議論・検証による淘汰を繰り返し、その遺伝子と思いは本番機であるDEN-RACE Soloへと集結している。
主な出来事
モンスター開発のターニングポイントとなった出来事を3つ紹介する。
【カンブリア爆発期】
追加購入した生贄※、ブラシ等の素材、各自のアイデアが出そろい、モンスターの形になり始めた時期。結果に繋がらなかったモンスターも多く誕生したが、これは本番機の有意性を裏付ける重要なバックデータであると同時に、メンバー達それぞれのワクワクを拡大した、意義あるものと言える。
※もちろん、必要な手続きを踏んで会社として購入している。
【アイデア見直し会議】
開発期間が半ばに差し掛かり、アイデアの棚卸を行った会議。“マッサージ器がマッサージ器である為に必要な事”について議論が行われ、一部アイデアの凍結が決定された。
【ワクワク会議】
この時点で開発中のアイデアはどれもブラシ推進の速度を超えることが出来なかった。リーダーはメンバーを招集し、問いかけた。“みんなブラシでワクワクしてる?否でしょ”
“ワクワク会議”では、(1)ブラシに勝てる見込みがあり、(2) 残り2週間で納品出来る、(3)具体的なアイデアを総員で再洗い出し、開発方針を定めた。同時に、他のアイデアを全て凍結し、リソースを“新たなワクワク”に振り分ける事を合意した。
DEN-RACEシリーズ
DEN-RACEの系譜
本章では、夜会に参戦した “DEN-RACE solo” につながるモンスターの系譜を紹介する。小串総合リーダーが開発した零号機をルーツにもち、最速記録を更新し続けた恐るべきモンスター群である。
零号機
ブラシ推進の力をチームに示した記念碑的なモンスター。
左右の電動マッサージ器は独立して作動し、推進と左右の操舵機能を兼ねる。むき出しの結束バンド、割り箸、ガムテープ等が製作のスピード感を物語る。アイデアを即座に現実に持込み、試行錯誤する事の有効性も示した。別名DEN-RACE Zero。
電動マッサージ器(回転反転型)
ヘッドの振動は、長手方向を軸に回転するウェイトによって発生する。
縦型配置を行えば、機体はロール軸回転の反トルクの影響を受ける。
対策として、回転方向を反転したマッサージ器を対にしてこれを打ち消す構成が考案された。
Tips:走行性能
25mのタイムは27秒台をマーク。その後も独自の改良が続き、最終的に20秒台にまで到達したとされる。
初号機
零号機をベースに製品としての完成度を高めたモンスター。
不確定要素の排除による品質の安定をコンセプトとし、タイラップやガムテープでの固定を排除、専用設計の部品で結合される。完成車は2機以上、パーツは相当数が製造され、要素技術のテストベッドとしても活躍した。
専用設計の部品
ブラシ、電動マッサージ器の3Dスキャンデータを基に設計され、3Dプリンタで出力した部品が多く採用されている。開発・稼働期間が長く、同系部品の耐久性の検証にも役立った。
Tips:開発者
参号機開発者と1.5号機開発者が共同で設計したモンスター。手作り感あふれる零号機を見栄えよく仕上げたい、というのが裏テーマ。
1.5号機 DEN-RACE Solo(初期型)
本番機に繋がるターニングポイントとなったモンスター。
最大の特徴は、1本になった電動マッサージ器。最小単位で構成された機体は、大幅な軽量化を実現している。推進、操舵、姿勢維持に求められる最低限の要素を厳選して組み合わせた意欲作。
電動マッサージ器と推進機構の削減
早く安く効果的な試行錯誤には、シンプルなテストベッドが有効である。
このニーズに応えるべく、初号機を半分に切ったような機体が完成した。
副次的に、振動の回転成分が直進安定性へ与える影響の小ささも判明し、本番機の開発につながる。
Tips:1.5号機の由来
初号機から弐号機を作ろうとした際に、半分になってしまったので1.5号機。
参号機 DEN-RACE TRI
3本の電動マッサージ器を束ねた大型のモンスター。
零号機の機体構成に、新型推進機構 “斜板推進ユニット”を追加搭載。1.5週間の短期間開発を達成すべく、操舵とバランスはあえてブラシに頼るハイブリッド方式とした。ワクワク探究の最果てに辿り着いた、Sズキエンジニア達の最後の一手。
斜板推進ユニット
通常の製品設計においては回避される“共振現象”を味方に付けた意欲作。振動を推進力に変換する原理を解き、最適設計を狙っている。その力を引き出すことができれば、理論上の振動振幅は無限大。必然的に破壊に至る為、稼働時間を監視しての繊細な運用が必須である。
Tips:TRIの意味
“DEN-RACE TRI”は、丈大リーダーが開発終了の直前まで準備していた名前。“TRI”には3つの意味が込められている。
- ・3本のマッサージ器をつかう事
- ・DEN-RACE “Solo”、そしてI(各々自身)に挑戦する事
- ・エンジニアたちの知恵、意地、プライドの3つを搭載している事
お留守番モンスターズ
速い事にもワクワクできる。だが、速さだけがワクワクではない。
本章では、技術者たちのワクワクから生まれた個性豊かな実験機達、“お留守番モンスターズ”の調査結果を紹介する。実験機なので電動マッサージ器の姿が遠いのはご愛敬。
アイデア探究機群
電動マッサージ器の振動を推進力へ変換するにはどうすれば良いのか。より効率的で安定感のある形は無いか。手を動かして考えるスタイルで、まず、数多くの形態が生まれた。そこから生まれるアイデアや疑問は、ハイスピード映像や音計測等の技術を駆使して分析され、原理の理解を行った。
ブラシテスト機群
ブラシ推進に可能性が見いだされた後は、その勘所を掴むべく様々なブラシでのテストが行われた。ブラシは単体での自立が難しいものが多く、基礎検討からバランスの要素を排除する事を目的に、転倒防止の仮設フレームが製作された。生贄をそのまま使用した物の他に、模型用モーター製の簡易振動源を用いた小型モデル等も製作されている。
斜板テスト機群
市販のブラシよりもパラメータが定めやすい“板”を用いた推進の実験機群。手を動かすトライ&エラーから、先行研究の調査や市販の工作キットによる検証を経て、理論式の算出へ繋がる。この研究成果は参号機のメインエンジンに結実した。
しゃも太郎
必要最低限の構成で無線化のトライを行った。市販の低予算ラジコンから取り出した受信機とモーターのセットをリモート振動発生装置として用い、とっとと短期間で製作されたのだ。
開発者のコメント
本番時に無線化が必要であることが想定済みであり、コード付き電マだと恣意的な力が入ってしまうので、本番機を見据えた振動による推進の評価を皆に行ってもらいたく仕上げた。もっと使用要望あるかと思って量産準備もしていたけど宣伝不足のせいもあり、あまり使用されず終了。
でんマにゃん
ヘッドの振動軌道を利用して歩行に近い動きをする。速くて強いモンスターへの憧れから生まれた姿。マッサージに適した振動と歩容のグレーゾーンが難しく、アイデア見直し会議で開発凍結が決定しお留守番となった。
開発者のコメント
他のリンク機構だとマッサージと速さの両立が難しいと考え、スライダクランク機構を採用。弊社と同じくSの頭文字を持つメーカーの魔改造モンスターを参考に考案した。その実績から、10秒程度まで狙えると思い作製。
ホバー
走行時の抵抗を最小限にする事で、推進力を最大限に生かす。
摩擦低減のみとはいえ、マッサージ振動以外の力を使用する飛び道具的コンセプトは賛否両論を呼んだ。アイデア見直し会議の結果、開発凍結が決定しお留守番となった。
開発者のコメント
走行抵抗の内、転がり抵抗をほぼ0にすることができ、びっくり仰天の目標達成に一番可能性があると進めていた案。実際に初期の零号機より速かった。最終的には直打機構とブロアファンの動力源を0.4psの模型エンジンに換装する計画があった夢のモンスター。
仮称四号機
電動マッサージ器及びブラシを四本使う幻のモンスター。初号機をベースに一日で組み上がったが、パフォーマンスが奮わずその日の内に分解されてしまった。床清掃機能は試作機の中でも群を抜いている。その規格外の大きさはレギュレーションにもマッチしない。
開発者のコメント
安定感は後にも先にもピカイチだったと記憶。
リボルバードラゴン
エアソフトガンの機構を転用した直動アクチュエータによる推進を試みた。マッサージ試験は未実施だが、ほぐす能力は非常に強そう。リーダーの肩の保守を優先され、お留守番となった。ワクワク会議後も秘密裏に開発が続行されていた。よく見ると、リボルバー要素はない。
メンバーのコメント
自然とこの名で呼ばれ始めた。ピストン機構の振幅が大きいほど推進しやすいが、大きいと「振動」ではなくなりレギュレーションに適合しない。直動一本だとバランスを崩すので次にやるとしたら4本化だった。
Let‘s
中古のスクーターのエンジンを振動源に転用。“ワクワク会議”の後も、開発者の強い希望により開発続行を許可された。実走行に成功し、メンバーの心と工場の床に爪痕を残した。寸法と予算はレギュレーションを満たしているが、マッサージ器としての実用性がわずかに足りず、お留守番となった。
開発者のコメント
相手がモーター屋なら、Sズキはエンジンで勝負だ!精神で考え付いたモンスター。ギャロップ走法に難航したが、斜板の技術を取り入れる事で初走行に成功した。音がゴーカート。始動、走行だけで人を集める魅力を持つ。タイヤさえつけば25mを4秒で駆け抜ける事ができる性能、品質ともに最高のモンスタースクーター。
でんぐり返し
“ワクワク会議”により生み出された新たなワクワク。最もマッサージ器らしさを残した一品。マッサージ器の反トルクを利用してローリングを行うアイデア。可能性を感じる機敏な動きを見せたが、寸法のレギュレーションに関する問題が発生し、開発を中断。お留守番となった。
開発者のコメント
まずは1本タイプを試作して、それなりの速度でぐるぐる回ることを確認。その後、2本直列につなげて、走らせようとしていたが、長さが500mmを超えてレギュレーションNGで断念。
プレートコンパクタ
ワクワク会議の後、苦しい状況を打開すべくメンバーが温めていたアイデアを自主的に形にした。アスファルトや砂利を均す重機、プレートコンパクタの動きを再現した。滑らかに前進する事を実証したが、速度の面でブラシに追いつけず、開発を中断。お留守番となった。
開発者のコメント
振動で舗装などをならす機械からヒントをえました。
市販のブラシよりもパラメータが定めやすい“板”を用いた推進の実験機群。手を動かすトライ&エラーから、先行研究の調査や市販の工作キットによる検証を経て、理論式の算出へ繋がる。この研究成果は参号機のメインエンジンに結実した。
必要最低限の構成で無線化のトライを行った。市販の低予算ラジコンから取り出した受信機とモーターのセットをリモート振動発生装置として用い、とっとと短期間で製作されたのだ。
開発者のコメント
本番時に無線化が必要であることが想定済みであり、コード付き電マだと恣意的な力が入ってしまうので、本番機を見据えた振動による推進の評価を皆に行ってもらいたく仕上げた。もっと使用要望あるかと思って量産準備もしていたけど宣伝不足のせいもあり、あまり使用されず終了。
ヘッドの振動軌道を利用して歩行に近い動きをする。速くて強いモンスターへの憧れから生まれた姿。マッサージに適した振動と歩容のグレーゾーンが難しく、アイデア見直し会議で開発凍結が決定しお留守番となった。
開発者のコメント
他のリンク機構だとマッサージと速さの両立が難しいと考え、スライダクランク機構を採用。弊社と同じくSの頭文字を持つメーカーの魔改造モンスターを参考に考案した。その実績から、10秒程度まで狙えると思い作製。
走行時の抵抗を最小限にする事で、推進力を最大限に生かす。
摩擦低減のみとはいえ、マッサージ振動以外の力を使用する飛び道具的コンセプトは賛否両論を呼んだ。アイデア見直し会議の結果、開発凍結が決定しお留守番となった。
開発者のコメント
走行抵抗の内、転がり抵抗をほぼ0にすることができ、びっくり仰天の目標達成に一番可能性があると進めていた案。実際に初期の零号機より速かった。最終的には直打機構とブロアファンの動力源を0.4psの模型エンジンに換装する計画があった夢のモンスター。
電動マッサージ器及びブラシを四本使う幻のモンスター。初号機をベースに一日で組み上がったが、パフォーマンスが奮わずその日の内に分解されてしまった。床清掃機能は試作機の中でも群を抜いている。その規格外の大きさはレギュレーションにもマッチしない。
開発者のコメント
安定感は後にも先にもピカイチだったと記憶。
エアソフトガンの機構を転用した直動アクチュエータによる推進を試みた。マッサージ試験は未実施だが、ほぐす能力は非常に強そう。リーダーの肩の保守を優先され、お留守番となった。ワクワク会議後も秘密裏に開発が続行されていた。よく見ると、リボルバー要素はない。
メンバーのコメント
自然とこの名で呼ばれ始めた。ピストン機構の振幅が大きいほど推進しやすいが、大きいと「振動」ではなくなりレギュレーションに適合しない。直動一本だとバランスを崩すので次にやるとしたら4本化だった。
中古のスクーターのエンジンを振動源に転用。“ワクワク会議”の後も、開発者の強い希望により開発続行を許可された。実走行に成功し、メンバーの心と工場の床に爪痕を残した。寸法と予算はレギュレーションを満たしているが、マッサージ器としての実用性がわずかに足りず、お留守番となった。
開発者のコメント
相手がモーター屋なら、Sズキはエンジンで勝負だ!精神で考え付いたモンスター。ギャロップ走法に難航したが、斜板の技術を取り入れる事で初走行に成功した。音がゴーカート。始動、走行だけで人を集める魅力を持つ。タイヤさえつけば25mを4秒で駆け抜ける事ができる性能、品質ともに最高のモンスタースクーター。
“ワクワク会議”により生み出された新たなワクワク。最もマッサージ器らしさを残した一品。マッサージ器の反トルクを利用してローリングを行うアイデア。可能性を感じる機敏な動きを見せたが、寸法のレギュレーションに関する問題が発生し、開発を中断。お留守番となった。
開発者のコメント
まずは1本タイプを試作して、それなりの速度でぐるぐる回ることを確認。その後、2本直列につなげて、走らせようとしていたが、長さが500mmを超えてレギュレーションNGで断念。
ワクワク会議の後、苦しい状況を打開すべくメンバーが温めていたアイデアを自主的に形にした。アスファルトや砂利を均す重機、プレートコンパクタの動きを再現した。滑らかに前進する事を実証したが、速度の面でブラシに追いつけず、開発を中断。お留守番となった。
開発者のコメント
振動で舗装などをならす機械からヒントをえました。
おわりに
Sズキチームを主導した二人のリーダーのコメントを掲載する。
我々Sズキは、これからもワクワクの探求を続けてゆく。
ワクワクだらけ
本番で走行できなかったマシンにも、ワクワクしていただけましたでしょうか?
「やってみよう」をカタチにするだけでこんなにも多様なモノが生まれました。
多くの皆様の元にあるSズキ製品達にもそのDNAが流れていると思っていただけたら幸甚です。
家電モンスター 開発チームリーダー 鈴木 丈大
まず手を動かそう
浮かんだアイデアをすぐ手を動かし作ることで 、短い製作期間の中でこんなに多くのワクワクマシンが生まれました。多くのマシンが生存競争することで、真の最速マシンを作り上げることができたと思います。
本番に選ばれなかったマシンが多いこともSズキの誇りです。
ワクワクをくれるお留守番モンスター達に乾杯!!!
Sズキ魔改造PJ 総合リーダー 小串 俊明
編集後記
Sズキ家電チーム 魔改造の夜参戦レポート いかがでしたでしょうか。これ書いてる間になんだか仕事の山が出来ている気がしますが、お楽しみいただけたならば怒られないはずです。
上手くいった事、足りなかった事、様々ありましたが、無理難題にチームで挑み解決する楽しさを改めて感じる事ができました。
これからもSズキの一員として、皆様へワクワクを、私たちもワクワクしながらお届けできるよう精進して参ります。
家電モンスターチーム ロン毛のお兄さん 山根 淳志