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2001年 6月25日


スズキ、ATV新機種5モデルを輸出開始

スズキ VINSON LT-A500F

 スズキ株式会社は、北米、大洋州、欧州向けに輸出しているATV(All Terrain Vehicle=バギー車)について、新機種5モデルの輸出を始め、今夏以降に現地で順次販売開始する。 今回輸出開始するモデルは400cc エンジンを搭載した「LT −A400F」、「LT− A400」、「LT−F400F」、「LT−F400」及び500cc エンジンを搭載した「LT−A500F」の5機種。

 ATVは一人乗りのオフロード車で、1982年にスズキが初めて四輪タイプを開発、販売を開始した。あらゆる地形での走破性に優れ、ハンティングやトレールライディングなどのレジャーや、農業用実用車として使用されている。ATVはアメリカが最大のマーケットであり、昨年度の同国での需要は約65万台弱。その中で排気量251cc〜450ccクラスが構成比で約60%、451cc以上のクラスが約20%を占めており、今回スズキはこれらの市場に400cc 4機種と500cc1機種の計5機種を投入し拡販を図る計画である。当面日本で生産し、完成車の形で輸出していくが、現在ジョージア州ローム市に建設中のATV工場(SMAC=スズキ・マニュファクチャリング・オブ・アメリカ・コーポレーション)での生産に切り替えていく。また今後米国ATV工場より北米以外の大洋州、欧州へも順次輸出を開始していく。日本での販売は行わない。

 今回輸出市場へ新規に投入するスズキの新ATVは、快適なトレール走行が楽しめ、必要十分な実用性を備えたモデルであり、400cc のモデルは「EIGER 」(アイガー)、500cc のモデルは「VINSON」(ヴィンソン)という愛称で販売して行く。
   EIGER = ヨーロッパアルプス3名山のひとつ "Eiger" (3,970m)に因んだ名前
   VINSON = 南極大陸の最高峰、"Vinson Massif"(4,897m)に因んだ名前


「EIGER」 LT−A400F、 LT−A400 、 LT−F400F、 LT−F400の主な特長
堂々とした車格。
新開発の376cc、4ストローク、4バルブエンジン。信頼性の高い油冷エンジン。
V−ベルト式無段階オートマチックトランスミッションを採用。ハイ・ローの2速サブトランスミッション付き。(LT−A400F、LT−A400)
5速トランスミッション。ハイ・ローの2速サブトランスミッション付き。(LT−F400F、 LT−F400)
便利な2WD/4WD切り替え機構付き。(LT−A400F、 LT−F400F、)
標準装備のスピードメーター
前後ともに170mmのホイールストロークを確保して、乗り心地向上。
フロント;ダブルウィッシュボーン、リア;スウィングアームサスペンションを採用。
フロントディスクブレーキを採用。


「VINSON」 LT−A500Fの主な特長
堂々とした車格とスポーティーなスタイリング。異形デュアルヘッドライト。
493cc、4ストローク、4バルブ、水冷エンジンを搭載。カウンターバランサー付き。
自動車以外のエンジンに初めて採用されたプラズマ溶射シリンダー。 (次ページ参照)
V−ベルト式無段階オートマチックトランスミッションを採用。ハイ・ローの2速サブトランスミッション付き。
便利な電気式2WD/4WD切り替え機構付き。
多機能デジタルメーターを標準装備。
ハンドルバーマウントの補助灯。
前:180mm、後:200mmのホイールストロークを確保して、乗り心地向上。
フロント;ダブルウィッシュボーン、リア;スウィングアームサスペンションを採用。
フロント、リアともにディスクブレーキを採用。



LT-A500Fのエンジンに「プラズマ溶射シリンダー」を採用
 LT−A500Fのエンジンシリンダーには、新しく「プラズマ溶射」という技術を採用し、 シリンダーのスリーブレス化を図っている。 従来のエンジンは、シリンダブロックに「スリーブ」と呼ばれる厚く重い鋳鉄部品が挿入されているが、この新技術は、シリンダブロックに直接異種材料を溶射し、薄く軽い皮膜に「スリーブ」の役割を持たせたもの。エンジンのシリンダーにプラズマ溶射を採用するのは、海外自動車メーカーでは既に実績があるが、国内自動車メーカーでは初めて。また、二輪、ATV のエンジンでの採用は世界初となる。スリーブレス化によるメリットは、エンジンを軽量、コンパクトにすることが出来ることに加え、燃費が向上し、また冷却性能も向上するため、エンジンの高性能化が図れる。

 プラズマ溶射は、シリンダの内面に硬質の粒を当てて表面を粗くした後、溶射材料(鉄とアルミの粉末)を、プラズマを熱源とするガス炎の中に投入することで、溶融状態にして吹き付けて皮膜を形成する技術。プラズマ溶射は同じスリーブレス化のための手段であるメッキシリンダーに比べると、薬液を使わないため廃液の発生が無く、環境面で優れており、また治具の製作が容易なことから、ジェットエンジンのタービンなどの少量多品種生産にも向いており、新機種への対応が早いというメリットがある。

 スズキは今回ATVのエンジンにこの技術を応用するにあたって、独自のシリンダー生産用システムを開発した。 ブラスト工程で「Closed Bore Blast System」(*)という方法を用い、従来広い空間を占有していたブラストを、限られた空間内で処理する方法を使い、装置のコンパクト化を図っている。また、プラズマ溶射も、「Twin Powder Supply System」(*)と呼ぶ、皮膜材料である鉄の粉末と、アルミの粉末を別々に分離して供給する方式を採用し、粉末の混合工程を不要としただけでなく、ノズルの目詰まりをなくし、複合皮膜の連続溶射を可能にした。
(*特許出願中)
プラズマ溶射の概念図 溶射シリンダー製造工程の概略