スズキ財団平成22年度の助成について
総額6,530万円、内研究助成として計35件、5,588万円の助成を決定
財団法人 スズキ財団(理事長 鈴木 修)は2月18日、全国の大学等研究機関から応募のあった助成申請に対して、平成22年度の科学技術研究助成および課題提案型研究助成として計35件、5,588万円の助成を決定した。その他の助成とあわせ、総額は6,530万円となる。
科学技術研究助成について
今回の科学技術研究助成は、生産関連技術4件、環境・省エネルギー関連技術8件、計測・制御・解析関連技術4件、材料関連技術8件、電気・電子・情報関連技術5件、人間工学・医療関連技術3件、ロボット関連技術1件の合計33件であり、いずれも独創的、先進的な研究開発テーマである。33件の助成総額は3,975万円。
具体的には、
- 生産関連技術では、高信頼性化を目指した自動車用アルミニウム合金/鋼接合部の微小領域特性評価に関する研究。(No.9)
- 環境・省エネルギー関連では、火花点火式内燃機関におけるノッキングフリー燃焼の研究、あるいは、EV、PEVの駆動系および充電器におけるキャパシタの活用と制御方法の研究。(No.18、No.23)
- 計測・制御・解析関連では、構造軽量化を目指した縫合繊維強化複合材料のマルチスケール解析シミュレーションの開発、あるいはプレス成形シミュレーション高精度化のための材料モデル開発(No.10、No.24)
- 材料関連では、マイクロバルーン発泡生分解性高分子ブレンド材の軽量化と衝撃吸収特性の改善、あるいは、車載ヒータ用非鉛・非希土類元素高温PTCセラミックスの開発(No.6、No.17)
- 電気・電子・情報関連では、生態心理学における「衝突までの残り時間τ」を利用した衝突防止装置の開発とロボットの群行動形成への応用。(No.2)
- 人間工学・医療関連では、日常的に利用可能な客観的疲労計測・管理システムの開発。(No.4)
- ロボット関連技術では、ワイヤ式自重補償装置を備えた6足歩行機械による難所調査技術の高度化(No.29)
など、今回も広い分野の研究テーマへの助成を決定した。(助成対象研究一覧は以下の通り)
課題提案型研究助成について
同財団では、自然科学分野の基礎的・独創的な研究に対する助成に加えて、平成15年度より、時代の要請であり、且つ、可及的速やかに解決が求められる問題等につきテーマを設定して応募を募る「課題提案型研究助成」も実施している。研究期間は2年間、過去7年で10件の研究助成を行った。平成22年度は、環境保全やエネルギー資源を節約するための「車両の軽量化」につながる工学的研究として、自動車部材(金属材料、無機ガラス材料)の、プラスチック材料への置き換えを目指す研究「プラスチック材料に耐擦傷性・耐候性を付与する有機・無機ハイブリッドコーティング材の設計指針構築」および、ポリプロピレン樹脂の剛性を上げて薄肉化を図るもので、ポリプロピレン樹脂に添加剤を加えて結晶化を制御し、「ベニア板構造」の新規材料創製を目指す「ベニア板構造を形成する新規ポリプロピレン成形体の研究開発とその応用」の、2件に対しそれぞれ助成を行う。本年の助成総額は、新規決定の2件と昨年度決定1件の2年目分をあわせ、1,613万円。
その他の助成及び活動について
また、同財団では研究成果を普及させ、研究の更なる充実・発展を図るため国内外で行われるシンポジウム・フォーラム等の開催費や海外の学会等への渡航・宿泊費に対する助成、ブダペスト工科・経済大学等海外からの研究留学者の受け入れ助成、財団ニュースの発行等広く活動を行っている。これらの助成総額は、942万円。
同財団はスズキ(株)が創立60周年の記念事業として基金を寄託し、1980年3月に設立したもので、本年で31回目の研究助成となる。
設立以来の助成内容は、総件数1,144件、累計助成総額13億2,806万円の実績となっている。また財団の平成22年3月末現在の資産総額は約47億3千万円となっている。
スズキ財団の概要
財団名 | 財団法人 スズキ財団 |
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理事長 | 鈴木 修(スズキ株式会社 取締役会長兼社長) |
所在地 | 東京都新宿区大京町23-2 |
TEL | 03-3356-2555 |
FAX | 03-3356-2505 |
目的 | 国民生活における利便の増進に資する機械等の生産及び利用、消費に係わる科学的研究の助成とその成果の普及を通じて、日本の機械工業の総合的な発展と国民福祉の増進に寄与することを目的とする。 |
資産総額 | 約47億3千万円(平成22年3月末現在) |
平成22年度 スズキ財団 助成一覧
科学技術研究助成
№ | 研究課題 | 機関名 | 役職 | |
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1 | 前熱処理による100%木質材料の全乾成形性の向上と実成形への応用 | 京都工芸繊維大学 | 准教授 | |
2 | 生態心理学における「衝突までの残り時間τ」を利用した衝突防止装置の開発とロボットの群行動形成への応用 | 法政大学 | 准教授 | |
3 | 平常時の頭部動き情報の学習に基づく危険運転予測モデルの構築 | 徳島大学 | 助教 | |
4 | 日常的に利用可能な客観的疲労計測・管理システムの開発 | 産業技術総合研究所 | 研究 グループ長 |
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5 | 希土類ホウ素化物の巨大磁気熱量効果と新しい磁気冷凍材料としての応用 | 金沢大学 | 准教授 | |
6 | マイクロバルーン発泡生分解性高分子ブレンド材の軽量化と衝撃吸収特性の改善 | 慶應義塾大学 | 准教授 | |
7 | ワイヤ表面性状の最適化による微細ワイヤ放電加工特性の向上 | 岡山大学 | 准教授 | |
8 | 簡便な不安定プラークの検出装置開発を目指した分子イメージング技術の開発 | 浜松医科大学 | 准教授 | |
9 | 高信頼性化を目指した自動車用アルミニウム合金/鋼接合部の微小領域特性評価に関する研究 | 大阪大学 | 助教 | |
10 | 構造軽量化を目指した縫合繊維強化複合材料のマルチスケール解析シミュレーションの開発 | 大阪大学 | 准教授 | |
11 | 非接触二眼型高精度ドライバ視線検出システムの開発 | 熊本大学 | 准教授 | |
12 | 熱負荷によるねじ締結体の軸力挙動に関する研究(ボルト締結部のクリープによる軸力低下) | 工学院大学 | 教授 | |
13 | 超音波導波路を用いた組立式非接触搬送ラインの開発 | 東京工業大学 | 助教 | |
14 | 使用済みタイヤを用いた生分解性プラスチック複合材料の創製 | 首都大学東京 | 助教 | |
15 | 自動車用燃料電池に適した高耐食性金属製セパレータの開発 | 東海大学 | 准教授 | |
16 | 美術品輸送用トラックの免震装置の開発 | 福井大学 | 准教授 | |
17 | 車載ヒータ用非鉛・非希土類元素高温PTCセラミックスの開発 | 東京工業大学 | 准教授 | |
18 | 火花点火式内燃機関におけるノッキングフリー燃焼の研究 | 日本工業大学 | 准教授 | |
19 | ICカードと組込みシステムで実現する生活環境支援システムの構築 | 香川高等専門学校 | 助教 | |
20 | 近赤外分光法を用いたブレインマシンインターフェースの動的特性向上に関する研究 | 静岡大学 | 准教授 | |
21 | 新しい高機能ポリオレフィンの精密合成と特性解析 | 首都大学東京 | 教授 | |
22 | シングルナノ孔径を有する多孔質パラジウム系触媒の開発 | 京都大学 | 助教 | |
23 | EV,PEVの駆動系および充電器におけるキャパシタの活用と制御方法の研究 | 静岡理工科大学 | 講師 | |
24 | プレス成形シミュレーション高精度化のための材料モデル開発 | 広島大学 | 助教 | |
25 | メタン-空気予混合火炎における壁面と予混合火炎の干渉に関する数値解析 | 名古屋大学 | 助教 | |
26 | 視界明瞭化のための多重反射画像分離に関する研究 | 九州大学 | 准教授 | |
27 | 電子デバイス接合用次期候補材低Agはんだの熱疲労寿命解明に関する実験力学的研究 | 石川工業高等専門学校 | 准教授 | |
28 | 薄膜・膜材の強度を支配するマイクロ組織構造評価と強度評価手法の構築 | 静岡大学 | 助教 | |
29 | ワイヤ式自重補償装置を備えた6足歩行機械による難所調査技術の高度化 | 埼玉大学 | 助教 | |
30 | 均質化法による炭素繊維強化複合材料の端部応力評価手法の開発 | 筑波大学 | 講師 | |
31 | 熱プラズマ中でのアルミナの還元窒化を用いた高熱伝導窒化アルミニウム層形成 | 豊橋技術科学大学 | 助教 | |
32 | 多糖類の石油代替燃料への転換におけるギ酸中間体を介した新規水熱反応プロセスの開発 | 徳島大学 | 助教 | |
33 | 非対称断面チャンネル材の回転引き曲げ加工における不整変形抑制法 | 山梨大学 | 准教授 |
課題提案型研究助成
№ | 研究課題 | 機関名 | 役職 | |
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1 | プラスチック材料に耐擦傷性・耐候性を付与する有機・無機ハイブリッドコーティング材の設計指針構築 | 関西大学 | 教授 | |
2 | ベニア板構造を形成する新規ポリプロピレン成形体の研究開発とその応用 | 北陸先端科学技術大学院大学 | 教授 |
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