公益財団法人 スズキ財団(理事長 鈴木 修)は2月19日、全国の大学等研究機関から応募のあった助成申請に対して、令和2年(2020年)度の科学技術研究助成および課題提案型研究助成として59件、1億3,385万円の助成を決定した。その他の助成と合わせ、本年度の助成総額は1億3,843万円となる。
令和2年度 助成の内容 | 件数 | 助成額 | |
---|---|---|---|
(1)科学技術研究助成 一般 | 33件 | 7,859万円 | |
(1)科学技術研究助成 若手 | 22件 | 2,200万円 | |
(2)課題提案型研究助成 | 4件 | 3,326万円 | |
研究助成 小計 | 59件 | 1億3,385万円 | |
(3)研究成果普及助成 | 3件 | 120万円 | |
(4)研究留学者の受入れ助成 | 0件 | 338万円 | * |
助成件数・総額 | 62件 | 1億3,843万円 |
本年度の科学技術研究助成は、生産関連技術、環境・資源エネルギー関連技術、計測・制御・解析関連技術、材料関連技術、電気・電子・情報関連技術、人間工学・医療関連技術、ロボット関連技術、リサイクル関連技術の8つの研究分野を対象に公募され、一般33件、35歳以下若手22件、計55件の研究テーマへの助成を決定した。いずれも独創的、先進的な研究開発テーマで、総額1億59万円を助成する。
同財団では、自然科学分野の基礎的・独創的な研究に対する助成に加えて、2003年度より、時代の要請であり、かつ、可及的速やかに解決が求められる問題等につきテーマを設定して応募を募る「課題提案型研究助成」も実施している。研究期間は2年間、過去18年で37件の研究助成を行った。
令和2年度は、自動車に代表される移動体の情報・通信、および移動体の制御に関して、解決すべき課題とその解決方法に向けた方策の提案を受けた。
具体的には、1)「自動運転技術の物流拠点における適応を目指した移動物体認識技術の開発」、2)「ゲートウェイ用低コスト高セキュリティ省電力Switch-IPの開発」、3)「路面摩擦係数のリアルタイム測定が可能なインテリジェントタイヤによる車両制御の実現」、4)「次世代移動体用 磁気式内部力補償ブレーキ機構・制御の技術開発」を採択した。
本年度は新規決定の4件と昨年度までの4件の継続分を合せ、総額3,326万円を助成する。
同財団では研究成果を普及させ、研究の更なる充実・発展を図るため国内外で行われるシンポジウム・フォーラム等の開催に対して会場費用等を助成しているが、本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3件の助成に留まった。また研究者の海外学会等への渡航・宿泊費の助成については、応募がなかった。
また、同財団では、ハンガリー、インドからの研究者の招聘を行っている。本年度は、ハンガリーブタペスト工科経済大学から2名、インド工科大学ハイデラバード校から3名、インド工科大学デリー校から1名の計6名の研究留学者の招聘を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、次年度に延期された。
スズキ財団はスズキ株式会社が創立60周年の記念事業として基金を寄託し、1980年3月に設立したもので、2011年4月1日、新しい公益法人制度に則り公益財団法人となった。研究助成は本年で41回目となる。
財団名 | 公益財団法人 スズキ財団 | ![]() スズキ財団 シンボルマーク |
---|---|---|
理事長 | 鈴木 修(スズキ株式会社 代表取締役会長) | |
所在地 | 東京都港区東新橋2丁目2番8号 スズキビル東新橋2階 | |
TEL | 03-3431-2255 | |
FAX | 03-3431-3558 | |
助成総件数 | 1,855件 | |
累計助成総額 | 22億5,558万円 | |
資産総額 | 63億1,713万円(令和2年3月末現在) | |
目的 | 国民生活における利便の増進に資する機械等の生産及び利用、消費に係わる科学的研究の助成とその成果の普及を通じて、日本の機械工業の総合的な発展と国民福祉の増進に寄与することを目的とする。 |
No. | 研究課題 | 機関名 | 役職 | 専門分野 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 自動車用摺動部の高エネルギー効率化を達成する高耐久性固体潤滑薄膜の創製 | 広島大学 | 准教授 | 材料力学、材料強度学 | |
2 | 高温における三次元ひずみ分布イメージング手法の確立 | 東京理科大学 | 専任講師 | 材料強度学、複合材料工学、光学計測 | |
3 | 高周波大気圧プラズマを局所照射可能な超微細加工装置の開発 | 静岡大学 | 教授 | 精密工学、応用物理 | |
4 | テーラーメイドテクスチャリングによる自動車用エンジン摺動面の超低摩擦化技術の確立 | 名城大学 | 教授 | 機械材料、トライボロジー、表面改質 | |
5 | 太陽光励起レーザのための波長選択による新しい太陽光キャビティの開発 | 東京工科大学 | 准教授 | レーザ工学 | |
6 | 小型ATVの悪路走破性能向上に関する研究 | 神奈川工科大学 | 准教授 | 自動車工学、自動車の電動化、内燃機関 | |
7 | ワイヤ断線レス高性能放電加工のための加工液最適フラッシング法の研究 | 岡山大学 | 教授 | 生産工学・特殊加工学 | |
8 | 計測と解析を融合した空冷式燃料電池内の水移動現象の見える化 | 慶應義塾大学 | 准教授 | 伝熱工学 | |
9 | データ同化を援用したボルト・接着併用接合評価システムの開発 | 東京都市大学 | 准教授 | 材料力学、計算力学 | |
10 | 水素混合によるアルミニウム粉体の燃焼特性と火炎伝播メカニズムの解明 | 広島大学 | 助教 | 燃焼工学、安全工学 | |
11 | Tachi‐Miura多面体に基づく軽量セル構造体を用いた衝撃吸収機構の設計 | 金沢大学 | 助教 | 金属・複合材料、金属物理学、材料強度学、材料組織学、材料創製・加工 | |
12 | 超短時間浸炭焼入れ鋼の疲労信頼性の評価 | 慶應義塾大学 | 教授 | 材料強度学・材料工学 | |
13 | データ駆動型冗長系設計と精密位置決めシステムへの応用 | 兵庫県立大学 | 准教授 | 制御工学 | |
14 | 高精度・高効率なレーザ金属積層造形技術の開発 | 大阪大学 | 准教授 | レーザプロセス、光化学、光と物質の相互作用、電磁気学 | |
15 | 振動制御のための初期応力を有するバイメタルからなる自動車部品における新たな形状最適設計手法の創生 | 公立小松大学 | 助教 | 設計工学 | |
16 | 副室トーチ火炎を用いた能動的熱発生率制御による等温燃焼技術の構築 | 大分大学 | 教授 | 熱工学、エンジンシステム、燃焼学 | |
17 | 固体材料の燃焼限界付近の燃焼不安定性に及ぼす重力の影響 | 東京大学 | 准教授 | 燃焼化学、反応性熱流体、内燃機関、航空宇宙推進 | |
18 | 超磁歪アクチュエータを用いた超小型EVの車内音響制御に関する研究 | 東海大学 | 講師 | 制御工学、磁気工学、振動工学 | |
19 | セルフパワー型ウイルスの高感度検出技術の開発 | 静岡大学 | 教授 | ナノバイオ科学 | |
20 | 壁面境界がアンモニア層流火炎の燃焼生成ガス特性に及ぼす影響 | 東北大学 | 准教授 | 燃焼工学 | |
21 | ディーゼルエンジンのブローバイガス除湿装置の開発 | 北見工業大学 | 教授 | 機械工学(熱工学) | |
22 | 全天球シーンの携帯端末への効果的提示方法に関する研究 | 九州大学 | 准教授 | コンピュータビジョン、画像処理 | |
23 | 水素用アルミニウム合金における応力腐食割れ進展特性の高精度評価法の確立 | 静岡大学 | 准教授 | 材料強度学、破壊力学、機械材料学 | |
24 | 超軽量柔軟多価イオン伝導性固体電解質の開発 | 大阪工業大学 | 特任准教授 | 分子エレクトロニクス、分子性固体物性、環境エネルギー | |
25 | ハイブリッド熱分解法によるCFRPリサイクル技術の最適化 | 香川大学 | 講師 | 材料力学、材料強度学、破壊力学、リサイクル | |
26 | 感圧センサーシートの開発による空力画像計測の実用化 | 早稲田大学 | 准教授 | 流体工学 | |
27 | 高周波数領域のタイヤ振動特性の実験同定 | 豊橋技術科学大学 | 助教 | 機械工学(振動工学、機械力学) | |
28 | 適応共鳴ネットワークの多層化による運転エピソードの構築 | 秋田県立大学 | 准教授 | 情報工学 | |
29 | ハイブリッド自動車のプラントモデル開発および電動過給機・電動EGR過給機の適用可能性に関する研究 | 産業技術総合研究所 | 主任研究員 | 熱工学、内燃機関工学、自動車工学 | |
30 | 次世代3Dプリンタのための原料粉末の設計 | 豊橋技術科学大学 | 教授 | 材料工学 | |
31 | 多成分スラリーの沈降静水圧測定による粒子集合状態評価技術の確立と製造プロセス高度化への応用 | 法政大学 | 教授 | 化学工学 | |
32 | 三次元ステレオカメラモーション高速診断によるCOVID-19環境下での在宅高齢者の肺炎予防技術と、運転者見守り技術への展開 | 東北大学 | 教授 | 生理学、心臓血管、自律神経、人工心臓 | |
33 | 加齢にともなう皮膚粘弾性低下は筋形状変化と力調節能の低下を起こすか? | 信州大学 | 教授 | 応用生理学、バイオメカニクス、筋メカニクス、神経科学 |
No. | 研究課題 | 機関名 | 役職 | 専門分野 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | オートエンコーダによる噴霧液滴自着火モードの検知 | 九州大学 | 助教 | 燃焼 | |
2 | キャビテーション処理を施したはすば歯車表面の圧縮残留応力に関する研究 | 東京電機大学 | 助教 | 材料加工学、機械材料学 | |
3 | 歩行時の疼痛軽減を目的とした正常歩行へ誘導可能な装着型ロボット装具の開発 | 青山学院大学 | 助教 | ロボット工学、運動器リハビリテーション、メカトロニクス | |
4 | 汎用ビデオカメラを利用した傾動式注湯プロセスのオフライン解析 | 東京都立産業技術高等専門学校 | 助教 | 制御工学、機械力学、鋳造プロセス工学 | |
5 | 全固体型臭化物シャトル電池の創製 | 九州大学 | 助教 | 固体電気化学 | |
6 | 力覚呈示によるパーソナルモビリティの運転操作支援システムの開発 | 産業技術総合研究所 | 研究員 | ロボットビジョン | |
7 | 高成形性および高生産性を実現する逃げ有りパンチを用いた管の口広げ加工 | 電気通信大学 | 助教 | 生産工学・加工学 | |
8 | とろみ調整食品の迅速粘度調整技術の開発 | 明治大学 | 助教 | 熱工学 | |
9 | コリオリ力とばね力を切替・併用するセミアクティブ動吸振器 | 茨城大学 | 助教 | 制振工学、アクチュエータ、電磁気学 | |
10 | 感温性塗料を用いた伝熱実験に基づく高機能性マルチスケール粗面の創生 | 大阪府立大学 | 助教 | 流体工学、伝熱工学、乱流工学 | |
11 | 高い衝突安全性能を有するポリマーラティス構造部材の創出 | 中央大学 | 助教 | 材料力学および機械材料 | |
12 | 燃焼反応における官能基含有多環芳香族炭化水素の生成挙動の解明に向けた新規分析手法の開発 | 産業技術総合研究所 | 研究員 | 燃焼工学、化学工学 | |
13 | 高強度・高信頼性を有する接着接合材創成のための表面処理技術の開発 | 京都工芸繊維大学 | 助教 | 機械工学、材料力学、材料強度学 | |
14 | 加熱空気噴流を用いた熱流束較正技術の開発 | 滋賀県立大学 | 講師 | 熱工学 | |
15 | 安全・安心な全方向パーソナルモビリティ開発に向けた新原理車輪機構の制御法構築 | 京都大学 | 助教 | 機構学、ロボット工学 | |
16 | 圧縮ねじり加工法を活用した材料組織制御によるアルミニウム合金の高性能化 | 名古屋工業大学 | 助教 | 材料組織制御、軽金属材料、異種材料接合、巨大ひずみ加工 | |
17 | 熱配管曲面に装着可能な電子輸送型炭素シートの機能化に伴う自動車廃棄熱の発電技術 | 山陽小野田市立 山口東京理科大学 |
助教 | 材料科学、コロイド化学 | |
18 | 自動車駆動用インバータに使用するコンデンサの小型化と低コスト化の検証 | 名古屋工業大学 | 助教 | パワーエレクトロニクス | |
19 | 運動共感に着目しデザインした人工物の実生活空間における実証研究 | 慶應義塾大学 | 特別研究員PD | デザイン学 | |
20 | IoT機器同士の決済サービスの実現に向けた高信頼ブロックチェーンシステム | 富山県立大学 | 助教 | コンピュータアーキテクチャ | |
21 | 樹脂フィルムへのテクスチャリングで製作可能な極薄アクチュエータの開発 | 岡山大学 | 助教 | アクチュエータ工学、ロボティクスメカトロニクス、機能性材料 | |
22 | 弱教師あり学習によるコンクリート構造物の自動点検手法 | 東京大学 | 特任研究員 | 機械学習、ロボティクス、インフラ点検 |
No. | 研究課題 | 機関名 | 役職 | 専門分野 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 自動運転技術の物流拠点における適応を目指 した移動物体認識技術の開発 | 金沢大学 | 教授 | 知覚情報処理、知能ロボティクス、知能機械学・機械システム | |
2 | ゲートウェイ用低コスト高セキュリティ省電力Switch-IPの開発 | 岡山県立大学 | 教授 | 設計工学・機械機能要素・トライボロジー、機械材料・材料力学 | |
3 | 路面摩擦係数のリアルタイム測定が可能なインテリジェントタイヤによる車両制御の実現 | 金沢大学 | 教授 | 電子デバイスおよび電子機器関連 | |
4 | 次世代移動体用 磁気式内部力補償ブレーキ機構・制御の技術開発 | 東北大学 | 准教授 | 知能機械学・機械システム、機械力学、ロボティクス |