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スズキイグニス、ニューカレドニアで速さを確認!
大排気量ターボ勢を蹴散らす。 |
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ニューカレドニア 2002年6月3日 |
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レグ1総合11位、イグニス好発進!
ニューカレドニアには珍しくラリースタート前の火曜、水曜と雨が降り続き、木曜日は快晴、そしてラリーが開始される金曜日はまた黒雲が空を覆うという異常気象で迎えたアジア・パシフィック選手権第2戦。首都ヌーメアでセレモニアルスタートを行なった後、アジア・パシフィック選手権出場車23台と、ニューカレドニア国内選手権出場車11台の計34台のラリー車は、ヌーメアから約70km北のブルパリのサービスパークへと向かった。レグ1はこの近辺の2ヵ所のステージを使って5本のSSをこなし、最後はヌーメア市内の競馬場でスーパースペシャルステージのSS6を行なうというもので、スペシャルステージのトータルは約60kmになっていた。
サービスパークに到着した選手たちは一様に空を眺めて首をかしげている。みんなタイヤ選択に悩んでいるのだ。2日間の雨でドロドロになった路面は昨日晴れたおかげでずいぶん良くなったが、今日また怪しい空模様で雨もぱらついたりしている。ここの路面は赤土だから、ウエットになると始末におえない。やはりウエット用タイヤで行くのが安全だろう、とほとんどのチームはマッドタイヤを履いてSS1に向かって行った。
スズキでも田嶋選手が迷っていた、しかしここは一発大きく賭けることにした。
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IGNIS:LEG1 |
「よし、ドライタイヤで行こう!」
この賭けは当たった。雨は降っても霧雨程度でしかなく、路面は予想以上に乾燥が進み、所によっては土埃も立つほどになってきた。8.5kmのSS1で田嶋イグニスは前戦キャンベラのアジパシ・ウィナーであるカルダローラ/ランサーと同タイムの5番時計を叩き出した。続く13kmのSS2でも5番時計と絶好調。ドライタイヤが大正解だった。田嶋イグニスは2ラップ目もドライタイヤで出走したが、空模様は今度は田嶋の期待どうりにもってはくれなかった。SS4のタイトコーナーがシャワーでぬかるみ、田嶋イグニスは勢い余ってコースオフ、観客らの助けを得てコースに復帰できたが2分ほどロスしてしまった。レグ1最後のスーパーSS6は、これも田嶋イグニスにとっては地獄だった。競馬場のインフィールドに設定された芝のコースはたっぷり水を含んだ‘重馬場’で超スリッパリー、さすがのイグニスも田嶋伸博のテクニックをもってしてもどうしようもない。天候で大きく左右されたレグ1だったが、田嶋イグニスは総合11位で完走した。懸念された地元のシトロエン・サクソらはやはりマシンとドライバーの実力が段違い、2リッター部門は完全に田嶋イグニスがアドバンテージを奪っていた。
レグ2、意味あるリタイヤ。
レグ2は更に北上してラ・フォアという街の近くで行なわれたが、ここで有名なのはカトリコワンという伝説の海獣の名を模したステージで、最速でも60km/hのアベレージがやっとというテクニカルコース。田嶋イグニスは昨年ここで総合3番手のタイムをマークして喝采を浴びた。今回もここでレグ1のロスタイム分を取り戻そうと意気込んでいた田嶋だったが、残念ながら雨によるダメージが回復せず、主催者はこのSSをキャンセルしてしまった。それでもレグ2は18km台のステージ2本を3回ずつ走り、最後にまたスーパーSSというハードな内容となっていた。ようやく南国らしい青空が広がったレグ2だったが、田嶋イグニスは3本目のSS9でストップしてしまった。ドライブシャフトのトラブルだった。本来ならこれだけドライになってトラクションが増大したら、ドライブシャフトなどのパーツは壊れる前に予防措置で交換するものだが、田嶋イグニスの目的はJWRCマシンの熟成にあるため、わざとパーツ交換せずに走ってイグニスの弱点を徹底的に洗い出す必要がある。そう言った意味ではこのリタイアも大きな意味があるわけだ。しかしこれでラリーが終わったわけではない。アジア・パシフィック選手権はリタイアしても修復して翌日も再スタート出来ると言うスーパーラリー方式になっているため、スズキチームはマシンを修理、最終日のスタートに備えることになった。
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IGNIS:LEG2 |
速いぞイグニス、絶好調のレグ3!!
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IGNIS:LEG3 |
天候も完全に回復して朝から青空の広がった空のもと、最終レグが始まった。コースは南に下り、2本のステージを3回ずつ走る最終日にしては濃い内容になっていた。田嶋イグニスは息を吹き返したマシンで最初から全開アタックを敢行、300馬力近い4WDターボマシンに混じって5,6番手のタイムを連発、その小気味良いエキゾーストノートと豪快なコーナリングで沿道に詰め掛けた観客を大いに沸かせた。そして最終SSでは4番時計を叩き出して有終の美を飾り、ゴールのヌーメアに向かった。
田嶋イグニスはリタイアしたため最終成績は残らなかったものの、レグ1とレグ3で2リッタークラス1位だったため、前戦と同じくアジア・パシフィック選手権ポイントを6点獲得、同部門でトータル12点のリーダーとなった。
「リタイアしたのは残念だったけれど、2週間後に控えたJWRC第3戦アクロポリス・ラリーのためのテストとしては成功だった」とゴールした田嶋は語っていたが、イグニス・スーパー1600はレグ2のトラブルとレグ3のパンク1本以外は全く問題無く、マシンとしての完成度はまた一段と高まったことを証明していた。ドライバー田嶋伸博としても豪快なニューカレドニアのコースを堪能出来、リタイアの悔しさも薄れたようだった。

アジアパシフィックラリー、次は、ニュージーランド北島のロトルアで開催される。
美しい温泉と悪名高きモツというステージが待つアジパシ唯一つの冬のイベントとなる。
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