緑の山が連なる愛知県新城市で
森林の保全・管理育成に努める
「新城森林組合」。
舗装されていない荒れた道やぬかるんだ道、
30度の急斜面をジムニーが
間伐の現場へ向かう。
森林組合で現場監督として働く
京極隆人さんに話を聞いた。
舗装されていない林道をゆく
“働くジムニー”
「働くスズキ」と聞いて思い浮かべるのは、キャリイのような軽トラックだろうか。エブリイのようなバンだろうか。スズキの軽SUV ジムニーもまた、働く人の相棒としてオフロードを駆けている。訪れたのは、愛知県の東部に位置する新城市。その市域の8割を森林が占め、多くのスギやヒノキがそびえ立つ。中でもスギは三河杉として知られ、江戸時代には江戸城や日光東照宮の修復に献上された名木だ。伝統ある森林を保全して管理育成する。そんな使命のバトンを今に受け継ぐのが「新城森林組合」だ。
ここで現場監督として働く京極さん。山主さんから間伐の依頼を受けると、現場に赴き状況を調査する。長く車が通っていなかったような道もある。そこに先陣を切って入っていくのがジムニーの役割だ。組合の車庫にあるジムニーに乗り込み、曲がりくねった山道をしばらく走るとやがて舗装されていない林道へと進入していく。その険しい道でこそ、ジムニーは本領を発揮する。
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木漏れ日が差す林道を抜け、間伐の現場を目指す。
ジムニーは仲間を救う
“命綱”でもある
山中の道は過酷を極める。重機が深いわだちを刻み、道の中央を高くせり上げる。土砂が降り積もり、行く手を阻む。最大30度にも及ぶ急斜面もある。「ジムニーは腹を擦らないのがいい」と京極さんは言う。最低地上高が高いジムニーは、車体下部を擦ることが少ない。狭い林道の両脇には、木々の枝が容赦なく張り出している。大型のSUVでは難しい道も、ジムニーならくぐり抜けられる。
ジムニーは、悪路に足をとられてスタックしてしまった仲間を助ける「命綱」の役割も果たしている。「仲間から『落ちました』って連絡がきて救出に向かう時は緊張しますね」と京極さんは語る。ジムニーで現場に向かうと、牽引ロープで脱輪した車を引き上げる。「無事に引っ張り出せた時はホッとしますね。自力じゃ帰れないですから」京極さんたちの仕事は、まさに命の危険をも伴う仕事だ。「ジムニーは1台はないと確実に困る車」と語る京極さん。その言葉の意味が、とても重いものに思えてくる。
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未舗装の道を、駆け抜けるジムニー。 -
現場を支える車の中で、ジムニーは悪路を任せられる頼もしい存在。
危険をともなう林業の現場で
命の危険をともなうのは京極さんたちだけではない。共に森林を守る職人さんたちもまた、過酷な現場で使命と向き合っている。チェーンソーを入れる角度や位置がわずかに違えば、1トンを超える大木が襲いかかることもある。命を懸けた仕事だからこそ、間伐の計画を立てる職人さんとの打合せは熱を帯びる。職人さんたちと議論して、山主さんの希望とすりあわせていく。両者の折り合いをつけるのも京極さんの仕事だ。
若い頃は、ベテランの職人さんに叱られながら仕事を学んだ。正面から向き合い信頼を得て、今では「お願いします!」とフランクに言える関係になった。体力のいる職人さんの仕事を手伝えるようにジムにも通い始めた。「山主さんと職人さんの意見の落としどころを見つけてお互いに納得いくようにする。丁寧な仕事をしたいですね」と京極さんは語る。
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現場で職人さんをサポートできるよう、入念に身支度を整える。 -
木々の様子を見ながら、職人さんと伐採方法を話し合う。
森林を守り続けるという
使命をのせて
薄暗い森の中、チェーンソーの音が響き渡る。職人さんが狙いを定めて切り込みを入れていく。束の間の静寂の後、大木がゆっくりと倒れ大きな音を立てる。ぽっかり開いた空からは、太陽の光が差し込んでくる。京極さんを始め、森林組合の方々や職人さんが危険な仕事に向き合うのは、そこに使命があるからだ。森林に太陽の光を入れなければ木々は太く育たない。下草も育たず土が剥き出しになると土砂災害の原因にもなる。森林の資産価値を守ること。山を人々の敵にしないこと。それが京極さんたちの使命だ。
森を未来へとつなぐ道のりは平坦ではない。木材を多く使用しない建築工法も増えてきたため、山を維持するコストと木材価値のバランスをとるのが難しいという現実もある。それでも京極さんたちはまっすぐに山と向き合う。「自然と共生していくためには手を入れ続けるしかないですから」森林を守り続ける。そんな使命をのせて、京極さんのジムニーは道なき道を突き進んでいく。
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森を未来へつなぐため、これからもジムニーと走り続ける。