この頃仕事中感じることは、とにかく忙しい・・・。何でこんなに仕事が来るんだ?と感じています。
整備の仕事があることは、有難いんですけど、点検車両が落ち着いても、一般整備がドーンとくる。う~ん、早く仕上げることも必要なんですけど、もっと大事なことは、良い整備を行って、安全、快適に車を仕上げること。このことにつきますね。必要以上のスピードは、安全を無視してしまう事で大事故に繋がる。保安監督の仕事は、相手がいるという事を意識して、これからも仕事に携わりたいと思っています。
今回の整備アーカイブも、ご縁があった整備作業になります。データは2020/06/01 13:10となっております。H23年式パレット 走行距離は173000㎞です。新規のお客様で、中古車を購入したのですが、とにかく走行中うるさくて会話が出来ないということで、ご相談に来店されました。色々お話を承らせて頂きましたが、買って一週間位・・・?との事。異音の基本的な診断方法は、まず同乗確認です。早速ご一緒に同乗させて頂きましたが、「ヴーン」という音がひどくて会話が成立しませんw。早速点検診断しましたら、右リヤハブベアリングの音が確認できました。他にもオイル漏れ、ブーツ切れ、マフラー穴、錆、前ブレーキからも振動が発生していました。お客様をお呼びして、立会い確認をします。話しながらお客様の表情を観ていると、だんだん元気がなくなってきてるのがわかります。お客様の気持ちを察して、話します。
リフト下での会話
s「原因は大まかに特定できました。ただ、音が大きすぎるので、他にも音が出ているかもしれません」
お客様「お金がかかりそうだな・・・」
s「私も整備に関しては、お答え出来るんですが、財布の方はこれっぽっちも苦手でして(;^ω^)どれ位かかるかお見積りフロントに作らせましょうか?」
お客様「お願いします。でもあっちこっちあり過ぎて、これはひどいな・・・。全部やると相当お金がかかるな・・・」
s「どこを先ずやるか、優先順位を付けてみましょう。それでお客様のお支払いの範囲で出来るか?またお話しましょう」
お客様「こりゃ外れの車を買わされたな・・・」
s「これ、おいくらで買われたのですか?」
お客様「9万円」
s「!!!
めっちゃ安いですね~」
お客様「そうなんだよ。通勤用で買ったんだ。だから、少し位傷んでても別にいいかと思ったんだけど、走ったらもううるさ過ぎて我慢の限界がきてたんです。」
ここでsはお客様の心にもう一歩踏み込みます。本来は、NGの会話ですが、本質を知りたかったので
s「買ったところでは対応してくれないんですか?納車して間もないし」
お客様「あそこの店は駄目だ!俺を馬鹿にしている。車のことを知らないと思って下にみやがって・・・」
s「でもパレットは9万円では絶対に買えませんよ。ハイトワゴンは人気ですし、荷物も人もバンバン載せることができるし」
お客様「そうなんだよ!だから買ったんだけどな、まさかこんな状態だなんて・・・」
s「大丈夫ですよ。任せて下さい。絶対に良くなりますから。この大きな音を治して、出来ればここのオイル漏れも一緒に治せば、工賃も同時作業で安くなるし、後は、どこまで改善するか?は少しづつやっていきましょう。例え20万円修理がかかってもパレットは買えませんよ」
お客様「イヤー20万円は出せないよ。」
s「例えの話ですから、心配しないで下さい。」・・・その後見積り金額が出て、全部やっても17万弱(工場長あーざっす)
見積りをお渡ししながら
s「おっ予想より、安いですね。うちのフロントも頑張ってくれたんですね」
お客様「でも今は全部は出来ない。」
s「わかります。じゃあ、こことここでこれ位になります。出来ればブレーキも危ないので、やっていただけるとこちらも安心なんですけど・・・」
お客様「う~ん、予算の関係上、悪いけど音の所と、同時のオイル漏れの所をお願いしたい。」
というやりとりがあって、リヤ右ホーシングハブベアリングとリヤデフミッドシール交換の整備を致しました。リヤアクスルがこんな状態だから心配だな・・・ということで左のドラムも分解したらシャフトシールも弱ってました・・・。分解して良かった。ブレーキもバランスが出てなかったのでしっかり調整しました。
ただ、エキパイが腐って爆音がでてました。お客様のあのどんどん落ち込んでいく顔が思い浮かんできます。「何とかならないだろうか・・・」ご用命には整備しないと選択されたエキパイ交換の修理を、私の判断で行います。材料は、その辺に捨ててある一斗缶をメタルシャーでカットしてチャンバーに巻き付けて作りました。あくまで一時的な整備として対応しました。結構綺麗に出来たのですが、画像データはございません。ごめんなさい。
あと、ブレーキを踏むとキックバックがものすごくて、ペダルからの振動は当たり前ですが、音が「ダダダ」とものすごい状態です。どこのブレーキから振動の原因が出てるか診断します。本来はマニュアルですとダイヤルゲージを使ってドラム、ディスクの振れを基準範囲内か測定するんですけど、私はラインカットクランプレンチを使ってブレーキラインの油圧を遮断させて判定します。前ブレーキが原因と特定できました。この振動は、このままの状態を続けると、タイロットエンド、ラックエンド、はたまたステアリングギヤボックスのピニオンの破損を招きますので、やっていただきたかったのですが、今回は、どうしても駄目だということで、見送ったわけです。
一回目の納車の時、「究極の話、当店でやらなくても良いですから、どこのお店でも構いませんので、早く整備して下さい。」とお伝えしました。(社長、売り上げ上がらなくてごめんなさい)ハブの音はほぼしなくなったので、当然満足されましたし、本来整備を保留した排気の爆音がなくなってるだけでなく、トルクも出るようになったのでお客様も大変喜んでいました。オッシャー
ただ、飛び込みのお客様でしたので、その後どうなるかわからず、そんなことも日々の激務wで忘れかけていた数日後、工場長から、「sさん、あのパレットのお客様から電話があって整備予約してくれたよ」と。その時は「オッシャー!」ではなく、「あー本当に良かった良かった。あの状態だと危ないから」という気持ちでした。
二回目のご来店では、笑顔でご来店されました。早速フロントブレーキの整備を行います。内容は、キャリパーオーバーホール、パット、ディスク交換、キャリパーブラケット修正です。いわゆるブレーキ三点セットの整備です。これをすると、フロントブレーキは新車と同様の状態になります。
その振動の原因だったディスクを分解して「なんじゃこりゃ!!」と思った瞬間です。新品と比べてみました。ご覧ください。

これはもう・・・ディスクの厚さの限度値は大体2㎜が一般的なんですけど、センチの世界です(;^ω^)。しかもベンチレーテッドディスクの柱が錆の腐食が激しく、痩せて支えている状態も皮一枚なのがわかります。なんか目視でもディスクがひずんでるのが・・・(-_-;)
・・・私の過去の経験が蘇ります。三菱ミニカでディスクが走行中割れて、タイヤがロックし、ドライブシャフトが折れた事案を・・・。ギリギリセーフ。ふう。本当に危なかった。
ブレーキパット交換時、ディスクローターも消耗品です。ご予算に余裕がございましたら、こちらも整備されることもお勧めします。欧州車は8万キロ定期交換部品です。日本のディスクブレーキは、法定速度の関係や過度のブレーキ鳴き対策、製品品質も良くて中々眼が届きにくいですが、今回のディスク同様、塩害による腐食劣化がございますので、知っていただけると我々整備士も嬉しいです。
納車時に私もお話を伺いたかったのですが、チョー忙しかったので、お会い出来ず、残念でしたがちゃんと整備しましたよ~。Y様、またお茶でも飲みに息抜きにでも、いつでもお越しください。(^_^)/~
それでは皆様ご安全に♪