整備は毎日の積み重ねで、少しづつですが技術が向上していきます。趣味とは違って、プロは言い訳がきかない仕事です。特に安全をつかさどる仕事は、万が一を想定しないと成り立ちません。なので、これでいいということはございません。過去事例で、もうやりつくしただろうと思ったことも、視点を変えるともっとより良い方法があるのではないか?と思うことが大切だと思っています。年を取ってくると経験があるので、だんだん思考停止になってくるんですけど(笑)、やっぱり現場が面白いので、やりがいはいつになってもありますね。
整備アーカイブになります。前回のブログからのデータを少し・・・。データは2020/05/22 13:08になります。車両の詳細は、前回のブログ「祈りが通じるとき」をご参照頂ければと思います。
リヤデフミッドオイルシール交換の作業になります。久しぶりのジャジャ漏れ。お~これだけ漏れてるって何?という感じです。ご覧ください。

そして、コンパニオンフランジを固定してアイマークでネジの角度を確認します。

これは、ロックナットを再使用した際のマーキングではなく、どれくらいの角度で締めこまれているか確認するための角度法の基準値となります。マニュアルですとホーシングのデフケース脱着してからピニオンシャフトのカラーを交換してバックラッシュを出して交換するのですが、(そうしないと異音の原因になります)sはこの面一の状態を把握して作業します。フランジを左右に振って遊び分を確認し、ネジをいったん緩めてからそのまま戻します。で、どの角度でしまってるか体に覚えさせてからナットを外します。これでファイナルピニオンのカラーを面一で、余計につぶすことなく、リングギヤのバックラッシュもそのままに出来ることが可能です。
で、コンパニオンフランジを外すのですが、スプライン勘合していて圧入されてますので、プーラーで引き抜くのですが、

sはここでちょっと違う抜き方をします。それがこちら

デデ~ン。ドイツのクッコというメーカーの油圧ラムを使います。プーラーを使うとプーラーシャフトを締めながら抜き取るのですが、シャフト座面が回転するので、どうしてもピニオンシャフトの表面に傷が付きます。また、回転作業するので、プーラーを回らないように固定しなければいけませんので、プーラーをねじって曲げたり、必要以上の力がかかるとシャフトネジ部をガジッテしまうリスクがありますが、これま真っ直ぐに抜くので全く座面も工具も痛めません。しかもこの油圧ラム、最大10トン!!までということですから、プレスを横にしているようなものです。元々トラックのリーフスプリングブシュ交換やシャックルブッシュ交換で時間がかかってたのを何とか早くできないかということで購入した経緯があります。で、あとはある程度緩んだら、必殺エアハンマーでダダダダダ~です。あっという間に取れました。(工具はカシマセン。自分で買ってください)

フランジを外して新品と比べてみます

。爪が立つほどの段付き摩耗が見られましたので、フランジも交換します。ただ、外したオイルシールのリップをプニュプニュすると...

そんなに硬化していないんですよね。もしかしたら、どこかでやった可能性は否めません。もしフランジを再使用すると段付きから漏れてくるのは・・・最後まで解説はいらないでしょう。(再使用する場合は、打ち込む位置を少し変えるとある程度対応できる)
最後にフランジを取り付けて、フランジの遊びを見ながら、プリロードゼロのところを腕の感覚を信じて角度法で締め付けます。アイマークはその為です。

以上でマニュアルよりも早くて事故のない、正しく作業ができ、結果としてお客様のご負担を減らせた整備が出来ました。リヤデフはオイルがないと摩擦によって火災を引き起こしかねない重要保安部品です。定期的なデフオイル交換は、ベアリングや異音の予防整備になるだけでなく、中間加速もスムーズになるメリットがあり、燃費も0,5~1km位は向上する経験を持っています。
長岡の車は4WDが多いので、エンジンオイルだけでなくデフオイル、トランスファオイル交換も定期的にご用命承ります。車が軽くなったような感覚が体感できれば、最高です~。
それでは皆さんご安全に♪