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トップメッセージ

「人々の暮らしと地域社会に寄り添い、これからもインフラモビリティとして共に歩み続ける」 代表取締役社長 鈴木 俊宏

社是と三つの行動理念から成るOS

私たちスズキは、企業経営のあり方やその根幹である「スズキらしさ」について、「オペレーティングシステム(OS)」という言葉を用い、ご説明しています。パソコンやスマートフォンを動かす基本ソフトウェアのように、すべての行動や判断の土台となるものとして、私たちは常に「OS」を維持し、強化し続けていきます。その中身は、社是と三つの行動理念(「3現・2原」「小・少・軽・短・美」「中小企業型経営」)から成り立っています。

「OS」の中核である社是は、「お客様の立場になって価値ある製品を作ろう」を第一に掲げ、人々の生活に寄り添い、技術やサービスを追求する姿勢を示しています。これがスズキの経営において一番大事にしている部分です。

「3現・2原」は、問題解決のアプローチを示すものです。直ちに現場に行き、現物を見て、現実を確認するという「現場・現物・現実」を2025年9月に変更し、原理と原則の二つを加えました。製品づくりや情報活用における技術の高度化が進むことで「現場・現物・現実」をとらえる解像度がより高まり、これまで以上に深く探究することで「原理」に一歩ずつ近づくことができると考えます。その結果、私たちがこれまで「原則」だと考えていたことについても、より深く掘り下げて見直す必要があります。現場・現物・現実を出発点としながら、さらに深い理解を追求し、本質に近づいていく。その姿勢を明確にするために、私たちは「3現」に「2原」を加えました。

「小・少・軽・短・美」は、工場の現場から生まれたものです。お客様に価値を提供していくうえで、私たちが大切にしているものづくりの考え方を表しています。資源・エネルギーの無駄を省き、お客様の生活に合った丁度いい製品をお届けすること。それがスズキの独自性につながっています。

そして「中小企業型経営」は、意思決定の速さ、人と人との距離の近さ、変化に対応できる柔軟性やチャレンジ精神を持ち続けるための考え方です。スズキグループの全社員が当事者意識とスピード感を持って動く組織を目指します。

この「OS」のもと、お客様に寄り添った仕事をしていくのは一人ひとりの社員です。お客様と直接関わる社員だけでなく、全社員がチームスズキとして一丸になり、社是と三つの行動理念から成る「OS」を共有し、お客様に寄り添って仕事をしていきます。

お客様の立場になったモノづくりへ

スズキは、現在のスズキ株式会社の前身である鈴木式織機製作所の時代からお客様に寄り添い、生活インフラとして地域に貢献してきました。創業者の鈴木道雄が母親の仕事を楽にしようと、織機を手作りしたことをきっかけとして会社を立ち上げました。製品化にあたっては、その織機を使っていただいた周囲の人々から意見を聞き、問題点を解消し、改善を重ねました。これがお客様の立場になったモノづくりの原点です。

日本では小さくて使いやすく、お求めやすい価格と高性能を両立した車づくりをリードしてきました。日常・レジャー用としての乗用車だけではなく、仕事現場で必要不可欠とされる軽トラックや軽バンを開発し、国内産業の成長・発展に大きく貢献しました。また、パキスタンやハンガリーをはじめ海外各国でも、人々の生活を支える国民車として受け入れられ、信頼を築いてきました。

そして現在、スズキの成長戦略の柱となっているインドでは、1980年代初めに国策として立ち上げられた国民車構想に参画し、インドをモータリゼーションへ導く小型大衆車を発売するとともに、地域に根差した生産・販売体制を構築していきました。その後もインド国内においてサービスネットワークを拡大しています。現在ではサービス拠点数は6,000拠点に迫り、これを競争力の源泉として圧倒的シェアを保持しています。

日本、インドに限らずパキスタンやインドネシア、ハンガリーなどにおいても、そこで暮らすお客様が何を求めているかを考え、国民車となるような「People's car」を提供することで人々の生活を支えてきました。これからも地域社会との共存共栄を目指し、生活インフラとして貢献していきます。

生活に密着したインフラモビリティ

中期経営計画「By Your Side」において、「生活に密着したインフラモビリティ」を目指す姿として掲げました。

近年自動車業界を取り巻く環境は大きく変化しており、特に自動運転やシェアリングの動きは、自動車だけでなくモビリティ全体の在り方が問われています。スズキはこれまでと変わらず生活に密着し、不可欠な存在である「インフラモビリティ」として地域社会の移動を支えていきたいと考えています。

私たちが考える「インフラモビリティ」とは、単に移動のための乗り物ではありません。将来、自動運転やコネクテッド技術の進展によって、モビリティは道路や交通システム、地域サービスなどと連携しながら社会インフラの一部として機能していくと考えています。だからこそ私たちは、クルマという製品単体ではなく、人々の暮らしや仕事を支える移動の仕組み全体に目を向け、多様なパートナーとの共創を進めながら新たな価値の提供に挑戦していきます。

「インフラモビリティ」に期待される価値提供の拡大を果たしていくためには、異業種・異分野も含めた他社との連携が重要になるでしょう。そして多くの人々にとって利便性が高く、安全・安心な環境を作っていくうえで、これまでよりもっと人間中心の発想が求められてくると思います。そうしたことも含めて私たちは、今までと同じやり方でいいのかを見直す必要がありますし、未知の領域へ積極的にチャレンジしていかなくてはならないと認識しています。

インフラモビリティの事業領域を拡大

スズキは、日常・レジャー用途のモビリティに留まらず、仕事現場を支えるモビリティまで幅広い領域で事業を展開しています。言い換えれば、私たちは自動車メーカーとしての枠に留まらず、モビリティによる価値提供の幅を拡げています。

製品で具体例を挙げるならば、軽自動車規格のオフロード四輪駆動車である「ジムニー」は、レジャーで愛用されるだけでなく、勾配の険しい農園で作業されるお客様や狩猟、林業などに従事するお客様にとって必要不可欠なモビリティとして重宝されています。

また部門や製品カテゴリーの枠を超えた技術活用も進めています。セニアカーで培ってきた技術を多目的電動台車のベースユニットに応用したりするなど、柔軟に連携・協力し合う形でモノづくりに取り組んでいます。「中小企業型経営」の組織体制による、スズキならではの強みだと思います。

今後は、スタートアップ企業との連携強化などを通じて、「インフラモビリティ」としての事業領域をさらに拡大すべく、新たな発想による取り組みにスピード感を持って、積極的にチャレンジしていくつもりです。

エネルギー極少化と本質価値極大化

スズキは技術戦略として、「Right x Light Mobile Tech」を掲げています。これは、「Right(丁度いい)」と「Light(軽い)」という、「小・少・軽・短・美」の行動理念にもつながる二つの言葉を掛け合わせており、地球に寄り添う「エネルギー極少化」と、人に寄り添う「本質価値極大化」の両軸で推進していく取り組みです。

足もとでは国際情勢の不確実性が増す中、エネルギーの効率的な活用に向けたニーズがさらに高まってきました。スズキは、車重の100kg軽量化を実現するSライト技術や高効率な内燃機関、電動技術の開発に注力するなどし、エネルギー極少化を実現していきます。一方、本質価値極大化については、車づくりの原点に立ち返って本質的機能を見つめ直し、「丁度いい機能と丁度いい価格」で安全性と操作性、そして運転する楽しみをお客様に提供していきます。もちろん先ほどまでご説明してきた「インフラモビリティ」も本質価値の極大化にかかわる重要な要素です。

パワートレインに関して、スズキは「マルチパスウェイ」による現実的な技術選択を進めます。スズキの考えるマルチパスウェイは、世界一律でEVへシフトするのではなく、各国・各地域におけるインフラの状況や、お客様が無理なく購入できる価格を踏まえ、最適なパワートレインとエネルギー技術を組み合わせてお届けしていくというものです。

私たちは、すべてのEVが大容量電池を搭載する方向だけが正解とは考えていません。お客様の日々の使われ方に目を向けると、短距離移動が中心であるケースも多くあります。だからこそ、必要以上に大きな電池を搭載するのではなく、用途に応じた適正な電池容量と軽量な車体を組み合わせることで、エネルギー効率と購入しやすさを両立することが重要だと考えています。

また、総発電量の約7割を石炭火力に依存するインドでは、EVだけを普及させても実質的なCO2削減につながりません。そこでスズキは、農村部に大量にある牛糞からバイオガスを生成し、現地で高いシェアを持つ天然ガス車(CNG)に活用することで、カーボンニュートラルの実現を目指します。

他にも農業国向けの選択肢として、エタノールとガソリンの混合比を問わずに走行できるフレックス燃料車(FFV)を開発し、植物由来のバイオエタノール燃料に対応していきます。2026年6月には、マルチ・スズキ・インディア社を通じてスズキ初のフレックス燃料四輪車を市場に投入しました。

地域社会との共創

現在インドの人口は約14億人ですが、自動車を購入することができるのは、そのうち4億人程と言われています。私たちは、NextBharat Venturesを通じて次の10億人の人々とのつながりを築き、農村地域の雇用創出や中間層の創出を行うことで、インドで発生している所得の二極化という社会課題の解決に貢献していきます。地方に住む農家の人々の所得を高めていく取り組みは他にもあります。その一つが、先ほど述べました牛糞からのバイオガス生成です。農家の人々には、牛糞の買取による追加収入がもたらされます。

日本国内においても引き続き全国の販売店様、お取引先様の皆様と共に成長し、地域活性化に貢献いたします。また、スタートアップ企業など社外との共創にも注力していく方針です。

中期経営計画の進捗と新たな展開

2025年度は、中期経営計画「By Your Side」の1年目として好スタートを切ることができたと考えています。

私たちがやるべきことは、お客様が必要とする車を開発し、しっかりと販売して、求められるサービスをきちんと提供し続けていくことです。目標とする業績数値は掲げていますが、その達成のみを目的とせず、お客様に「スズキの車を買ってよかった」と思っていただくための努力をこれからも大事にしていきます。

国内自動車メーカーの中で、スズキのEV展開は最後発なのですが、タイミングが遅れたとは考えていません。これから本当の需要増加が始まる中で、いかにお客様の購入につなげていくかという勝負になります。お客様にEVのことを理解していただき、使い方を知っていただく活動なども進めながら、2026年を「EV元年」として普及を目指します。

事業環境が大きく変化する中で、私たちに求められているのは、お客様に選ばれ続ける商品・サービスを提供するとともに、強い経営基盤をつくり、持続的に企業価値を高めていくことです。

企業価値を高めるためには、限られた経営資源を本当に価値を生むところへ集中させることが重要です。

私たちは、経験や勘だけに頼らず、データや事実に基づいた精度の高い経営判断を行うために、スズキ流ROIC経営を導入しました。どこに経営資源を投入するべきか、チームスズキで議論していくためのツールとして活用し、スズキのOSと掛け合わせることで、企業価値の更なる向上に努めます。

AIをはじめとするデジタル技術は、経営基盤の一つになると考えています。一方で、AIの活用は、技術を導入すること自体が目的ではありません。現場・現物・現実を確認し、原理・原則まで掘り下げる「3現・2原」を徹底したうえで、競争力と稼ぐ力の強化につながる領域へ着実に展開していくことが重要です。

また、情報セキュリティや知的財産の保護、適正な利用を含めたAIに関するリスクマネジメントや人財育成についても継続して取り組みます。AIを人の知恵と現場力を高める手段として活かし、一人ひとりの挑戦をチームスズキ全体の成長につなげていきます。

チームスズキ全員で飛躍にチャレンジ

「By Your Side」というコーポレートスローガンは、今回冒頭からお話ししてきた社是や行動理念に込められた想いを抽出し、短く端的に表現した言葉です。私たちが寄り添うべきお客様は、製品を購入されるお客様だけでなく、サプライチェーンで結ばれるお取引先様や、社内で共に仕事に取り組む仲間も含め、自分自身が接していくすべての人々であると考えられます。Your Sideの立場となって考え、行動していく意識を持つことが、チームスズキにさらなる成長と発展をもたらすはずです。

ステークホルダーの皆様の期待に応え、企業価値の向上に努めるとともに社会に貢献し続けるインフラモビリティを目指し、チームスズキ全員で飛躍にチャレンジしてまいります。