ワニワニVan Bang Burn
Sズキが狙ったのは「ろうそくの全消し」
この高い目標を達成可能な作戦/マシン構成として、
3匹3様というモンスターを作りあげた。
ざっくりルール説明
- ・ワニちゃん水鉄砲の魔改造で、バースディケーキのロウソクを消すこと
- ・水鉄砲の発射台から、バースディケーキまでは7.5m。ロウソクは10本。
- ・3匹使い、30秒以内に撃ち切ること
- ・使える水の量は、1匹につき100ccとし、何回に分けて撃ってもよい
- ・失敗しても構わない
Sズキの作戦解説
- ・1匹目 ニ鈴(にりん)ちゃん:全てのロウソクに水を投入し弱体化
- ・2匹目 魔鈴(まりん)ちゃん:弱った炎を、ピストン式で鎮火
- ・3匹目 四鈴(よりん)ちゃん:魔鈴の取りこぼしを、長く伸びた左手で握ったカメラ+大きな水玉で、完全消火!
二鈴ちゃん/四鈴ちゃん
1匹目を担当する二輪ちゃんと、3匹目を担当する四輪ちゃん発射方向を決める土台は一体化されているが、求められる役割が異なるため、ノズル形状を含めた機能も、それぞれ異なる。
二鈴ちゃん
「水がかかってから、少し時間が経った後に、ロウソクの炎が消えることが多い」ということがテストでわかった。そのため、二輪ちゃんは全体に水をかけ、時間をかけて消火する。
四鈴ちゃん
カメラで消えてないロウソクを画像認識。
消えていないロウソクだけを狙い撃ち発射は20ccずつ5発。
土台/回転砲台の構造
夜会本番の環境・会場の床レベル・スタート台の精度等、魔改造/開発中には分からない不安要素を潰し込める構造を目指した。
① 2軸動作をコンパクトに
3Dプリントによる樹脂製ではあるものの、製作と検証を繰り返し、必要な剛性を確保。土台との摺動面にベアリング配置で負荷を軽減
② レーザーポインターで照準補助
砲台中心に搭載したLEDでワニがケーキの中心を捉えているか目視可能
③ レベル/水平誤差を埋める
廃工場・スタート台・ケーキとのレベル/水平誤差を埋めるために、土台3点にアジャスタを配置
土台自体は水射出の衝撃に耐え得る重鉄板
左手のカメラ
試技中にもどんどん変わっていく風向きなど、外乱がある本番環境であっても10本消しを狙うため、絶対に必要だと考えたのが画像認識のカメラ
適切な角度からの撮影とするため、ワニの左手は鍛えられ大きく肥大することとなった。
キャノン誕生
始まりは、ふと漏れた誰かの一言だった。「色々な案を試したら選択に自由度がでるよね」。サブ案の議論と検討が続けられた冬のある日、工房の片隅でキャノンは誕生した。
その名は魔鈴
メイン案二機に対してキャノンは"魔"の要素を持っていた。だからこそ、魔鈴と名付けられた。他の二機とは異なる発射方式による安定性を活かし、3本のロウソクを確実に消す任務を担うことになる。Sズキのダークホースとして、キャノンは静かにその性能を発揮する。
シンプルなのが良い
魔鈴の全体的な構造は、一般的な水鉄砲と同様シリンダとピストンを基本としている。
しかし、水を発射する主機構には空気圧で動くフリーピストンを採用し、テストベッドとして重要な再現性を重視した構成とした。
また、小孔が幾何学的に配列されたノズルは、シンプルなデザインの中でユニークさが際立っている。
アジャイル開発のトライ
本体はそのままでノズル部分は組み換えが容易な構造とすることで、迅速なショートループ開発を実施した。
またアイデアスケッチから即時に作製するラピッドプロトタイピングを実現できたことは、フィードバックをしながらCADで実現可能な形状に設計する技術や、高精度な加工技能の賜物であり、試作担当者たちに深く感謝している。
長い砲身のキャノンとワニちゃん水鉄砲の融合
あくまでワニちゃん水鉄砲の改造であり、夜会1週間前には未就学児に見せてワニと言ってもらう制約がある。そこで、長い口を持つワニ種であるガビアルをモチーフに、外観を大胆に改造した。
3Dプリンターで延長した口を作り結合した。ルール上、口の開閉が必要である。長く重くなった口を確実に開閉するため、 頭部のヒンジ部を3Dプリンターとアルミ棒を用いたフレーム構造とし、そこに外装をかぶせるレーシングカーと同様の手法を採用した。これでデザイン性と性能の両立が可能になった。
また口の延長部品と元のワニちゃん頭部の色合わせをするため、オールペン(全塗装)を施した。 元々の胴体を空気タンク後方に配置し、しっぽに見立てて形状を整え、こちらも塗装を施した。色味はモチーフとなるガビアルに合わせトーンを落としている。
胴体となる空気のタンクは、毛糸で編んだ手の込んだ装飾で覆った。
編み物は時間のかかるかぎ針をあえて採用し細部を表現。ワニちゃんらしさにこだわった。
かぎ針によるタイムロスは、編み方の粗さを形を保てるぎりぎりにすることで吸収。短納期を実現した。
こうして紛れもないワニに仕上がったのである。
ノズルの開発
7.5メートル先のターゲットに100ccの水を届けるためには、十分なエネルギー(速度)が必要だが、発射速度を上げると水が霧散してしまう問題があった。そこで、二鈴/四鈴と同様に層流で水を飛ばすことを目指し、ノズルの径、空気圧、仰角の設定を調整することで、水が7.5メートル先に美しい放物線を描いて飛ぶことに成功した。しかし、この方法では1本のロウソクを消すことしかできず、10本のロウソクを消す目標には遠く及ばない成果しか得られなかった。そこで一度の発射で複数のロウソクを消すことを目標に、ベクトルがそろった適切なサイズの水滴を飛ばし、かつ適度に拡散させるというノズルの開発を進めた。
気分転換の効果
開発中の気晴らしで作成した社章を模したノズルが、予想外にも2本のロウソクを消しかかる成果を上げた。
追試での観察の結果、大きな水滴が高密度でターゲットまで届いていたことがわかった。これはエンジンの燃料インジェクタで見られた、噴霧が液滴として再成長するのと似た現象と推察された。同様なノズルを作成し拡大試験したところ、再現性が確認できたためこれをベースに最終形状を決定した。作成されたノズルは最終的に24種類に上る。
アマゾンノ オクチ グリーン