スズキは、公正かつ効率的な企業活動を通じて、株主様、お客様、お取引先様、地域社会、従業員等の各ステークホルダーから信頼され、かつ国際社会の中でさらなる貢献をして、持続的に発展していく企業であり続けたいと考えています。その実現のためにはコーポレートガバナンスの継続的な向上が不可欠であると認識し、経営の最重要課題のひとつとして様々な施策に積極的に取り組んでいます。
スズキは、東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンス・コードの各原則の趣旨を踏まえ、今後も、株主様の権利・平等性の確保、取締役会及び監査役会の実効性の確保、内部統制システムの充実等に継続して努めていきます。
また、ステークホルダーや社会から一層のご信頼をいただけるよう、法令や規則が定める情報の迅速、正確かつ公平な開示を行うほか、スズキに対するご理解を深めていただくために有益と判断する情報の積極的な開示にも努め、企業の透明性をさらに高めていきます。
スズキは、監査役制度を基礎として、独立性の高い社外取締役を複数名選任すること、監査役の過半数を社外監査役とすること、取締役候補者の選任や報酬等に関する任意の委員会を設置すること等により、ガバナンス体制の向上を図ることができると考え、現状の体制を採用しています。
(2024年9月末現在)
(年度)
〜2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024〜 | |||||
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経営計画・戦略 | 中期経営目標 | 中期経営計画 SUZUKI NEXT 100 | 中期経営計画 〜小・少・軽・短・美〜 | ||||||||||||
2030年度に向けた成長戦略 | |||||||||||||||
取締役 | |||||||||||||||
任期 | 2002年以降 取締役任期:1年 | ||||||||||||||
監督・執行 | 2006年執行役員制度導入(取締役:29名→14名) | ||||||||||||||
人数 | 2013年6月以降:9名 | 8名 | 9名 | 8名 | |||||||||||
社外取締役人数 | 012年6月以降:2名 | 3名 | |||||||||||||
監査役 | |||||||||||||||
人数 | 2001年以降:5名(社外監査役:3名) |
スズキは、取締役会における意思決定のスピードアップ、機動的な業務執行、責任体制の明確化を図るために2006年に執行役員制度を導入し、取締役会の構成のスリム化を進めてきました。現在の取締役は8名で、うち3名は、経営監督機能を強化するとともに、それぞれの経験や知見と多様な視点から当社の経営に対して有益な助言・指摘等をいただくために社外取締役を選任しています。
取締役会は、原則として毎月1回開催するほか、必要に応じて随時開催しています。経営に関する基本方針、重要な業務執行に関する事項、株主総会から取締役会に授権された事項その他法令や定款に定める事項について、法令遵守・企業倫理の観点も含めた十分な議論のうえで意思決定を行うとともに、重要な業務執行に関する報告を適宜受けることにより、監督の強化を図っています。
なお、取締役の経営責任を明確にし、かつ経営環境の変化に柔軟に対応できるよう、取締役の任期は1年としています。
経営課題 |
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ガバナンス |
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人事・組織 |
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決算関係 |
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取締役会の実効性向上のための分析・評価を毎年実施しています。2023年度の分析・評価の概要は以下のとおりです。
スズキの競争力を向上するための取締役会の課題に着目。
主に社外取締役や社外監査役からの指摘を踏まえ、以下を2024年度の重点課題として特定しました。
スズキは、2030年度に向けた成長戦略(2023年1月発表)の達成に向けた新中期経営計画を2024年度末までに公表する予定です。取締役会の主要な役割・責務である会社の戦略的な方向付けの建設的な議論に資するべく、これらの重点課題への対応を含め、取締役会のさらなる実効性の向上に努めていきます。
(社外取締役・社外監査役からの意見)
監査役会は当社及びグループ各社の健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を取締役会と協働して確立することを目指し、独任制の機関として会社の適正な経営の遂行のための監査を行うとともに、経営陣に対して適切に意見を述べています。
監査役は、職務執行経験を持つ常勤監査役2名及び財務・会計、法務、技術等における高い専門知識、豊富な経験を有する社外監査役3名の5名で構成され、様々な視点で監査を行っています。
監査役監査の手続については、監査役会が定めた監査役監査の基準に準拠し、監査方針及び職務の分担等に従い、取締役会その他重要な会議への出席、重要な決裁書類等の閲覧、取締役及び使用人等から職務執行状況の報告・聴取等、を行い、会社の経営の遂行に対して監査役として意見を伝えています。
当社は監査役会を原則として毎月1回開催するほか、必要に応じて随時開催しています。
さらに、取締役会の議案について事前に監査役間での意見交換を行い、取締役会での有益な意見発言につながるよう取り組んでいます。
決議 |
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報告 |
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検討・審議 |
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監査役会は、その実効性評価に関して、各監査役が活動を振り返り、チェックリストによる評価及びアンケートによる意見・提案をもとに、監査役全員で議論・検証し、これらの内容を踏まえ、次期の監査計画に取組事項として反映させ、継続的な実効性の向上に努めています。
社外取締役及び社外監査役候補者を選定する際は、東京証券取引所が定める独立性に関する判断基準を踏まえて定めた「社外役員の独立性基準」に基づいて独立性を判断しています。スズキは、選任しているすべての社外取締役及び社外監査役を独立役員として東京証券取引所に届け出ています。
当社は、社外取締役及び社外監査役については、以下に該当しない場合に独立性を有する者と判断する。
取締役及び監査役がそれぞれの役割・責務等に関する理解を深めるための研修を実施します。この研修には、原則として取締役及び監査役が同時に参加して、互いの役割・責務等について共有を図る機会とします。
新任の社外取締役及び社外監査役に対しては、就任時に、当社の経営理念、事業内容、財務、組織等に関する説明を行います。また、社内の役職員との面談、経営・業務執行に関する各種会議や工場視察への出席等により、当社についての理解を深める機会を設けます。
スズキは、取締役及び監査役候補者の選任や取締役の報酬の決定における透明性及び客観性の向上を目的に、任意の委員会として、委員の過半数を社外取締役とする人事・報酬等委員会を設置しています。
人事・報酬等委員会では、取締役及び監査役候補者の選任基準、候補者の適正性、及び取締役の報酬体系・報酬水準の妥当性等を審議し、取締役会は、その結果を踏まえて決定することとしています。また、一部の事項は取締役会から人事・報酬等委員会に決定を委任します。
なお、上級の執行役員の選任や執行役員の報酬体系につきましても、人事・報酬等委員会の審議の結果を踏まえて取締役会で決定しています。
2023年度における主な検討内容は次のとおりです。
取締役会 | 監査役会 | 人事・報酬等委員会 | 企業経営(※1) | 技術/研究開発/調達/製造/品質 | 営業/マーケティング | 財務/会計 | 法務/リスクマネジメント | ESG/サステナビリティ | 人材開発/労務/人事 | 海外事業/国際経験(※2) | IT・デジタル | |||
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代表取締役社長 | 鈴木 俊宏 | ○ 17回/17回 |
○ 5回/5回 |
◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
代表取締役副社長 | 石井 直己 | 注1 | ○ 14回/14回 |
○ 3回/3回 |
◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ||||
取締役専務役員 | 加藤 勝弘 | 注2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
取締役専務役員 | 鳥居 重利 | 注2 | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | |||||||
取締役常務役員 | 岡島 有孝 | 注2 | ○ | ◎ | ○ | |||||||||
社外取締役 | 堂道 秀明 独立役員 |
○ 17回/17回 |
○ 5回/5回 |
○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ||||||
社外取締役 | 江草 俊 独立役員 |
○ 17回/17回 |
○ 5回/5回 |
○ | ○ | ○ | ||||||||
社外取締役 | 高橋 尚子 独立役員女性 |
注1 | ○ 13回/14回 |
○ 2回/3回 |
○ | ◎ | ||||||||
常勤監査役 | 豊田 泰輔 | ○ 17回/17回 |
◎ 13回/13回 |
○ | ○ | ○ | ||||||||
常勤監査役 | 山岸 重雄 | 注3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
社外監査役 | 長野 哲久 独立役員 |
○ 17回/17回 |
○ 13回/13回 |
△ 5回/5回 |
○ | |||||||||
社外監査役 | 福田 充宏 独立役員 |
○ 16回/17回 |
○ 12回/13回 |
△ 4回/5回 |
○ | ○ | ||||||||
社外監査役 | 鬼頭 潤子 独立役員女性 |
注3 | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | |||||||
○:委員、 △:オブザーバー |
経営上の重要課題・対策を迅速に審議、決定するために、業務執行取締役、執行役員及び本部長等ならびに監査役が出席する経営会議や経営・業務執行に関する情報を報告・共有する会議を定期的かつ必要に応じて随時開催しています。
また、業務計画等の審議や月次の業況報告等を行う各種会議を定期的かつ必要に応じて随時開催し、的確な計画の立案、早期の課題抽出、業務執行状況の把握ができるようにしています。
これらにより、取締役会における意思決定や業務執行の監督の効率性を高めています。
スズキグループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、コンプライアンスの徹底やリスク管理等に関する事項を検討し、対策や施策の実行を推進するコーポレートガバナンス委員会を設置しています。また、同委員会は、金融商品取引法第24条の4の4第1項に基づく財務報告に係る内部統制の有効性評価結果の検証を行っています。
なお、2023年4月より、社長を委員長、副社長ならびに専務役員及び常務役員の一部を副委員長、その他の執行役員及び本部長を委員、オブザーバーとして常勤監査役が出席する体制に改め、コンプライアンスを含むリスク管理全般を統括する運用を開始しています。
社長直轄の組織として監査本部を設置し、会社業務の各分野に精通した人員を中心としたスタッフが、監査計画に基づいて当社各部門並びに国内・海外の関係会社の業務監査を実施するとともに、監査指摘事項については、改善の助言・指導を行っています。
業務監査においては、業務全般の適正性や効率性、法令及び社内ルールの遵守状況、資産の管理・保全状況等の内部統制の整備・運用状況を現場及びリモートによる監査や書面調査などで確認しています。業務監査の結果は、監査の都度、指摘事項の改善案とともに社長、関係役員に報告し、かつ監査役会で監査結果報告及び意見交換を行い、半期に一度、取締役会で報告しています。改善については、完了するまで、助言・指導を行い、問題点の早期是正に努めています。
金融商品取引法第24条の4の4第1項に基づく財務報告に係る内部統制の有効性評価については、コーポレートガバナンス委員会のもと実施し、その結果を同委員会から取締役会、監査役会へ報告しています。
なお、内部監査部門を有する海外子会社に対しては、それら内部監査部門の活動状況を確認するとともに、監査計画や監査結果の報告を受け、必要に応じて助言・指導を行っています。
また、会計監査人とも相互に監査結果を随時共有し、定期的に意見交換を実施することで情報共有、意思の疎通を図り、緊密な連携を維持しています。
取締役の個人別の報酬等の決定方針(以下、決定方針)は、委員の過半数を社外取締役とする人事・報酬等委員会に決定方針案の妥当性を諮問し、その答申を踏まえて取締役会の決議で定めています。本データブック発行時点の決定方針の概要は次のとおりです。
取締役(社外取締役を除く)の報酬は、当社の企業価値の持続的な向上に対するインセンティブとして機能するよう、基本報酬、各事業年度の業績に連動する賞与及び中長期的な株価に連動する譲渡制限付株式報酬で構成し、その割合は、概ね基本報酬40%、賞与30%、譲渡制限付株式報酬30%を目安としています。なお、社外取締役の報酬は、その職務に鑑みて基本報酬のみとします。
月例の固定報酬とし、職務・職責、他社水準及び従業員給与の水準等を考慮して決定し、支給します。
各事業年度の業績向上に対する意識を高め、企業価値の持続的な向上に対するインセンティブとして機能することを目的として、取締役(社外取締役を除く)に対して支給しているものです。個人別の具体的な支給額は、取締役会であらかじめ定める業績指標に、取締役会であらかじめ定める一定割合及び職位別乗率を乗じることによって算定します。なお、業績指標は会社の収益性の観点から連結営業利益としています。
企業価値の持続的な向上に対するインセンティブとして機能すること、また、株主の皆様とのさらなる価値共有を進めることを目的として、取締役(社外取締役を除く)に対して交付しているものです。交付対象の取締役は、取締役会決議に基づいて支給される報酬(金銭報酬債権)の全部を現物出資財産として払い込むことにより、当社の普通株式の交付を受けます。なお、譲渡制限期間は取締役の地位を退任する日までの間であり、取締役会が正当と認める理由以外での退任等、一定の事由に該当した場合は、交付した株式を当社が無償で取得します。
監査役の報酬は、基本報酬(月例の固定報酬)のみとし、監査役の協議により決定し、支給します。
役員区分 | 報酬の総額 (百万円) |
報酬の種類別の総額 (百万円) |
対象となる役員の数 (名) |
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基本報酬 | 賞与 | 譲渡制限付株式報酬 | |||
取締役 (社外取締役を除く) |
598 | 213 | 232 | 152 | 7 |
社外取締役 | 38 | 38 | ― | ― | 3 |
計 | 636 | 251 | 232 | 152 | 10 |
監査役 (社外監査役を除く) |
64 | 64 | ― | ― | 2 |
社外監査役 | 41 | 41 | ― | ― | 3 |
計 | 106 | 106 | ― | ― | 5 |
スズキは、中長期的な視点での株主と建設的な対話により株主の関心や懸念を把握することが、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると考え、株主との対話の促進に努めています。
2023年度に実施した株主等とのミーティング数は369回、ミーティングをした会社数は1,157社、ミーティング者数は1,525名にのぼります。
株主との建設的な対話を促進するための方針は、次のとおりです。
東京にIR担当役員(取締役)が常駐し、IR取材の窓口として担当部門を設置しています。これをサポートするために、本社には決算短信、IR資料等の開示資料を作成する部門を設置しています。
株主等との対話には、株主の希望や主な関心事項を踏まえて合理的な範囲で対応することとし、応対者については合理的な範囲で取締役や的確に説明ができる知識・経験を有する上位の役職者が臨むことを基本とします。
2023年度においては、ミーティング数369回の内、64回(17%)をIR担当役員が対応しました。
東京のIR窓口部門と本社のIRサポート部門は、関係部門と連携して株主等との対話のテーマにより事前に検討・認識の共有を図ります。テーマによっては関係部門も出席するものとします。
個別面談のほか、証券アナリスト・機関投資家向けの四半期毎の決算説明会、国内外でのインベスターズ・カンファレンス、IRイベント(新車発表会、事業説明会、技術説明会等)を随時、実施します。また、当社のホームページに掲載するIR関連資料(英訳を含む)の充実を図ります。
2023年度のミーティング数369回のうち、253回(69%)は電話会議、Webミーティング等オンラインによるものでした。
オンラインミーティングの実施により多くの海外機関投資家とのミーティングに対応でき、2023年度にミーティングをした会社1,157社のうち、海外機関投資家は718社(62%)でした。
ミーティング数369回のうち、21回(6%)はESGに関するもので、議決権行使担当者とのミーティングを含みます。
通常のミーティングでは、当社が主力とする四輪インド市場や四輪日本市場等の状況に加え、電動化戦略、財務数値、株主還元等、企業価値向上に資する議論を主なテーマとしています。
ESGミーティングでも、カーボンニュートラルへの施策、成長戦略、人権、女性活躍、人的資本への投資やコーポレートガバナンス等について幅広く意見交換しています。
株主等との面談で得られた意見、関心、懸念等は、適宜、経営陣に報告し、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に活かします。
2023年度においては、株主等からいただいた意見、懸念を経営陣に計17件報告、さらに年度後半からはIRをテーマとした経営陣との定期ミーティングも実施しており、情報開示の質的向上に加え、成長戦略説明会の実施、社外取締役への女性登用、決算開示資料・統合報告書等の改善、自社株買いの実施等さまざまな施策に反映しています。
インサイダー情報が外部に漏えいしないよう管理を徹底します。
決算発表前1ヵ月間程度のサイレント期間(沈黙期間)を設け、株主等との決算情報に関する対話を制限します。
株主等との対話に際しては、相互監視の観点から、原則として複数名で対応します。
投資家、証券アナリスト等、取引関係者への情報開示に際しては、金融商品取引法に定められたフェア・ディスクロージャー・ルールを遵守します。
実施回数 | 会社数 | 人数 | |
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全体 | うち、ESGミーティング | ||
369回 | 21回 | 1,157社 | 1,525名 |
スズキは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、事業機会の創出、業務提携、安定的な取引・協力関係の構築、維持、強化等に資すると判断する場合、取引先等の株式を保有します。
個別の政策保有株式の保有の適否は、毎年、取締役会で検証します。保有に伴う便益やリスク等について、取引の性質や規模等に加え、企業価値向上等の定性面や、資本コストとの比較等の定量面の判断基準を設けて総合的に判断し、売却対象とした銘柄は縮減を進めています。
なお、2023年度末時点では、4銘柄を2024年度中に売却する対象として、特定しています。
スズキグループが持続的に成長・発展するためには、社会から信頼され、その活動が支持され理解を得られなければならず、そのためには、法令や社内規程を守るだけでなく、社会規範も遵守し、高い倫理観に基づいて活動することが不可欠と認識しています。
スズキでは、創業以来受け継がれてきた伝統や精神を母体として、1962年にスズキグループ全体で価値観を共有することを目的に、スズキが「どのような会社でありたいか」という企業理念を表した「社是」を制定しました(詳細は「企業理念」をご参照ください)。
また2016年には、社是の精神に則り、スズキグループで働く人々が健全かつ効率的、精力的に職務に専念することを可能にするためのルールとして「スズキグループ行動指針」(以下、「行動指針」)を策定しています。この行動指針は、スズキグループの全従業員が常に携行できるよう冊子化し、日本語版の他に、国内の外国人従業員向けに英語版・ポルトガル語版を作成して配布しています。また、海外の子会社においても、それぞれの母国語で書かれたものが従業員に配布されています。
さらに2020年には、行動指針に基づいて、コンプライアンスの視点からスズキグループで働く人々が実践しなければならないことや、やってはいけないことを具体的にまとめた「コンプライアンス・ハンドブック」を発行して国内の全従業員に配布しています。こちらも日本語版の他、英語版・ポルトガル語版を作成して、日々の業務において随時確認・振り返りができるようにしています。
スズキでは、取締役会の下にコーポレートガバナンス委員会を設置しています。同委員会は、コンプライアンスの徹底やリスク管理等に関する事項を検討し、関係部門と連携しながら組織横断的な課題への対策や施策を推進しています。また、金融商品取引法第24条の4の4第1項に基づく財務報告にかかる内部統制の有効性評価結果の検証を行っています。
なお、同委員会は、2023年3月の取締役会決議を経て、2023年4月より社長を委員長、副社長、専務役員及び常務役員の一部を副委員長、その他の執行役員及び本部長を委員とし、オブザーバーとして常勤監査役が出席する体制に改め、コンプライアンスを含むリスク管理全般を統括する運用を開始しています。また、2024年6月、7月の取締役会決議を経て、同委員会及び経営・業務執行会議の各会議体の在り方並びに付議事項を整理・明確化し、経営層への適時報告や審議の実効性を向上させる見直しを行いました。
従業員のコンプライアンス意識の啓発や個別の法令遵守のための注意喚起を全社に向けて行うとともに、コンプライアンス事案が生じた場合は、都度これを審議して必要な措置を講じ、その内容は適宜取締役及び監査役に報告しています。
スズキは、コンプライアンス違反の未然防止や早期是正を図るために、内部通報制度に基づく通報窓口(スズキグループ・リスクマネジメント・ホットライン。社内窓口2か所、社外窓口(法律事務所)1か所。)を設け、国内海外問わずスズキグループの全役員・従業員(派遣社員、期間社員等の他、退職者も含む)や、取引先、請負事業者等社外の関係者からの通報を受け付けています。通報窓口では、通報者の匿名性確保や通報内容の秘密保持など、通報者の保護に関するルールを設け、利用者が不利益な取り扱いを受けることなく法令違反等やその可能性を通報できる体制を整えています。
また、内部通報制度の認知や利用に関するアンケートを実施して、従業員の声を改善につなげる取り組みも行っています。
過去5年間(2019〜2023年度)の内部通報実績はグラフの通りです。
※ コンプライアンス関係のみを集計
スズキグループ社内ではコンプライアンスに係る教育・研修を実施しています。主に階層別の集合教育の中で、新入社員から管理監督者まで、各層別に適した教育メニューを選定した上で、計画的・継続的に実施しています。
対象 | スズキ株式会社 | スズキグループ国内代理店・販売関係会社等 |
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受講者数 | 1,169名 | 3,886名 |
対象研修 |
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主なテーマ | 労務管理、就業規則、安全衛生管理、防火管理、内部通報、ハラスメント、知的財産(著作権など)、下請法、安全輸出管理 他 |
日常的にコンプライアンスを意識する風土を作るため、役員・従業員の業務用PC立ち上げ時に毎日1問、コンプライアンス関連のクイズをPCに表示する形式のEラーニングを、2017年6月から毎日実施しています。
2016年の燃費・排出ガス試験問題及び2018年の完成検査問題を風化させないための毎年の取り組みである「リメンバー5.18活動」を、社長をはじめ役員及び従業員全員が参加する形で実施しており、コンプライアンス意識とコミュニケーションの向上により不正が起きない職場風土の醸成に努めています。2023年度からは、総点検として「業務と法令の関連」について全社で棚卸活動を実施し、日々の業務に対して問題がないか振り返り、問題が小さなうちに解決する取り組みを開始しています。
2024年度は、国内55代理店および海外主要5拠点にも活動を拡大しました。今年度の棚卸活動では、法令変更等があった業務や新たに追加された業務における問題を中心に、全社で共有し、自分事として捉え、チームスズキで対策に取り組むことを確認しました。昨年度から改善した業務も多々あり、活動の成果が出ています。継続して、日々の業務改善に努めます。次年度は、未実施の海外拠点にも活動を拡大し、スズキグループ全体でコンプライアンスの活動に取り組む体制をさらに整えていきます。
また、スズキ株式会社のすべての本部・工場・拠点に社長が直接訪問し、法令遵守や新たな業務の取り組みについて従業員と意見を交わす職場対話を継続しています。2023年度はスズキ株式会社の国内39ヵ所の事務所、拠点を訪問しました。
リメンバー5.18活動の様子(2024年5月17日実施)
販売代理店では「お客様から信頼いただけるスタッフ」を育成するため、業種及びキャリアに応じた教育システムを策定して社員を教育しています。また、人財が活躍する組織づくりやリスク管理のため、ハラスメントやSDGsについても学ぶ機会を設け、受講させています。
株式会社スズキ自販佐賀
管理者向けハラスメント研修
2023年12月19日に承認された独自の独占禁止法および反競争法ハンドブックを採用しました。さらに、2023年12月21日には全従業員に対してガイダンスと法令遵守のための覚書を公表しました。印刷したハンドブックを2024年4月16日に配布しました。
取締役会の下に、コーポレートガバナンス委員会を設置しています。同委員会はコンプライアンスの徹底やリスク管理に関する施策を展開し、また関係部門との連携により組織横断的な課題への取り組みを推進しています。
各部門で発生または認識した問題は、緊急性や重要度に応じて、コーポレートガバナンス委員会その他の会議体で速やかに審議し、解決につなげています。製品の品質、認証、完成検査等に関する問題、半導体をはじめとした部品・原材料不足の問題や、気候変動・低炭素社会への移行等に関する新たな課題などによる事業への影響を、迅速に把握して必要な経営判断を下すべく、各本部より懸念される影響と対策を週次で確認しています。特に重要な課題については取締役会にて審議・報告しています。
品質問題への対応の長期化によりお客様に多大なご迷惑をお掛けし対策費用も増大する事態を回避するため、迅速な原因究明と対策を行う体制の強化に取り組んでおり、週次及び月次の経営会議等で品質問題の最新状況を常に把握しています。なお、リコール等の市場措置については、関係する役員、本部長、部長等で構成する品質対策委員会で審議のうえ決定しています。
税務コンプライアンスを徹底し、適正な納税を行うための基本方針として、「スズキグループ税務方針」を制定しました。(2022年12月制定、2024年9月改訂)
スズキグループは、お客様の立場になって価値ある製品・サービスをお届けすることを社是の第一として事業を行うとともに、納税の重要性を理解し、納税を通じた利益の社会への還元によって納税者としての義務を果たし、社会に貢献することに努めます。
各国の税法や租税条約を遵守すること、かつ、OECD移転価格ガイドラインやBEPS行動計画等の国際的な規範等の精神に則ることにより、公正、公平な納税を行うとともに、不当な租税回避的行為を行いません。
財務管掌役員が税務の責任者として、スズキ全体を管轄します。スズキグループは、税務リスクに対する適切な管理、報告体制を構築しており、税務申告等は取締役会が報告を受けています。監査役はこれに同席し、内容を確認しています。特に緊急性や重要性の高い税務リスクについては、経営陣が必要に応じて取締役会で審議を行い解決に努めます。また、定期的な社内教育を通じて、社員一人一人の税務コンプライアンスに関する理解と認識を深めていきます。
税務当局とは、あらゆる機会を通じて信頼関係の醸成に努めます。また、相互の理解に齟齬がある場合には、速やかにコミュニケーションを図るとともに、税務調査に誠実に対応し、透明性の高い納税に努めます。
移転価格課税など、国際課税における二重課税のリスクを十分理解し、独立企業間原則に従ったルーリングに基づいて国際取引を行います。また、二重課税が生じた場合には、専門家への相談、各国税務当局との協議、各種救済措置の実施を通じて、二重課税の排除に努めます。
スズキグループは、独占禁止法等の競争関係法令、その他公正な商取引に関する法令、社会規範が国や地域によって異なる可能性があることを認識しつつ、それらを把握した上で、スズキグループの社員がそれぞれの国や地域の法令、社会規範を遵守するよう教育を徹底します。贈収賄などあらゆる腐敗の防止に取り組みます。
スズキグループでは、スズキグループ行動指針において「法令等の遵守(コンプライアンス)」を掲げ、またコンプライアンス・ハンドブックにおいて「わいろ(贈収賄)」と「接待」の項を設け、贈収賄の防止に努めています。
贈収賄禁止の考え方をさらに明確にするため、取締役会決議を経て2024年3月に「スズキグループの贈収賄禁止についての基本指針」を定めました。贈収賄が各国の厳しい制裁や社会的信用の失墜につながることを十分に認識し、本基本指針に基づいて贈収賄など不正な手段に一切関与しないよう行動します。
また、業務で関与する全ての事業者(お取引先、合弁事業の相手方、コンサルタント、代理人等を含む。)に対しても、本基本方針の遵守を求めます。
本基本指針は、スズキ株式会社及びその連結子会社(以下、併せてスズキグループという)並びにその役職員が、贈収賄に関与することを防止し、適用されるすべての国の贈収賄禁止法令を遵守することを徹底するために定めるものであり、もって各国の贈収賄禁止法令の遵守及び公正且つ倫理的な事業活動に資することを目的とする。
本基本指針の適用範囲は、スズキグループ各社並びにこれらの役員及び従業員とする。
スズキグループは、公務員等に対し、いかなる国又は地域におけるスズキグループの事業に関連し、ファシリテーション・ペイメント(通常の行政サービスの円滑化のための少額の支払)を一切行わない。
スズキグループは、業務で関与する全ての事業者(お取引先、合弁事業の相手方、コンサルタント、代理人等を含む。)に対しても、本基本方針の遵守を求める。また、スズキグループの事業に関連して、他の事業者による贈収賄行為の事実及びその可能性が判明した場合は、当該事業者とは取引を行わず、既に取引関係にある場合は取引を中止する。
スズキグループは、スズキグループの事業に関連して、接待・贈答等を含むすべての取引及び資産の処分について合理的に詳細で、正確且つ公正な会計記録を作成、保持する。
本基本方針に関して疑問に思ったり判断に迷ったりした場合又は何らかの不正に気付いた場合は、直ちに上司に報告のうえ法務部門(法務部門が無い場合は弁護士)に相談する。
制定2024年3月
スズキは「コンプライアンス・ハンドブック」において具体的なNG行為(例:ファシリテーション・ペイメント、企業活動に影響力のある公務員などの接待等)を例示するなどしてその防止に努めています。ハンドブックは外国語版も作成し、グループ会社にも展開しています。
すべてのお取引先様と公正で節度ある関係を構築・維持するため、お取引先様から受ける接待に関する社内規程を制定し、記録の管理など、全役員・従業員にルールの遵守を要請しています。
スズキは、スズキグループ行動指針の中で競争法令等の遵守を謳い、その教育を徹底しています。また、「コンプライアンス・ハンドブック」「競争法ハンドブック」を配布し、具体的なNG行為を分かりやすく例示するなどして従業員の理解の底上げを図っています。
スズキでは事業活動のグローバル展開に伴い、お取引先様をはじめとするステークホルダーの多国籍化・多様化が進んでおり、各国の法令・社会規範に従うことはもとより、文化や歴史に配慮して社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を果たすことへの期待が高まっています。
かかる社会的要請を踏まえて、ビジネスパートナーであるお取引先様とともに果たすべき社会的責任の基本的な考え方、実践すべき事柄を「スズキお取引先様CSRガイドライン」としてまとめ、スズキとサプライヤーが一体となったCSR活動を推進しています。
また、当社では2022年12月に「スズキグループの人権尊重についての基本方針」を新たに定めました。「人権の尊重」はすべての企業活動の基本であると考え、スズキグループの各社にその周知徹底を図っています。さらに、お取引先様や販売店を含む事業に関連するすべてのビジネスパートナーの皆様にも、当方針にご理解をいただき、人権尊重の取り組みを期待するとともに、積極的な働きかけを行い、協力して取り組みを進めていきます。
(→スズキグループの人権尊重についての基本方針)
自然災害への対策の一環として、南海トラフ巨大地震を想定した事業継続計画(BCP)を策定して、これに基づき必要な手元資金、借入枠の確保をしています。
スズキは、南海トラフ巨大地震など自然災害の発生に備えて、「従業員の命を守ること」「お客様のために早く事業を復旧すること」を最優先に考え、被害の影響を最小限に抑えるべく、建物・設備等の耐震対策、防火対策、災害対策組織の設置を含む行動マニュアル・事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定、地震保険への加入等、さまざまな対策を講じています。
当社グループは、従来より南海トラフ巨大地震を想定したさまざまな予防策を講じてきましたが、東日本大震災の発生を受け、津波被害が想定される静岡県磐田市竜洋地区拠点の浜松市北部の都田地区への移転、相良工場に集中していた軽自動車用エンジン生産の湖西工場への分散、四輪車開発拠点である相良コースのリスク分散も兼ねたインドの研究施設の拡充など、海外も含めた生産・研究拠点分散を実施しています。また、災害発生時に設置される災害対策本部の機能を向上させるため、本社では専門のコンサルティング会社の協力を得て、役員や本部各係員が参加しての訓練を定期的に実施しています。これらの活動を通じて、引き続き災害に対する対応能力を高めていきます。
スズキは、施設の一部を地域住民の方々の津波避難場所として登録し、年1回避難場所の見学会を開催しています。また地震が起きた時は、本社屋上に監視員を配置し、津波の発生状況を確認し、津波を発見した場合にサイレンを鳴動して従業員や周辺の住民の方々に知らせる仕組みを作っており、本社屋上に手動と電動のサイレンを設置し、電動サイレンは停電時に備え、専用の発電機でも起動できるようになっています。
津波避難場所見学会
本社及び各工場、製造関係会社では、従業員の命を守ることを目的に、緊急地震速報を導入し、緊急地震速報が鳴ったら自分の身の安全を守り、津波の危険がある事業所では浸水被害の想定がない場所に安全に避難できるよう全従業員参加の地震・津波避難訓練を繰り返し実施しています。災害発生時の緊急連絡手段として、各工場や全国の代理店に衛星電話や無線機等の通信機器を設置し、速やかに従業員の安否確認を行える体制をとっており、定期的に通信訓練を行い、非常時に備えています。
また、勤務時間外の従業員の安否確認方法として地震・津波災害発生時の「安否情報システム」を導入しています。震度5弱以上の地震が発生した際、従業員・家族の安否が確認できるよう、各自が登録したメールアドレスに、“安否を問い合わせるメール”が自動送信され、メールを受け取った従業員は、自らの安否を送信し、役職者が安否を把握できるシステムとなっており、震災時に迅速な安否確認ができるように、年2回訓練を実施しています。
さらに、各家庭で地震や水害に備えてもらうため、全従業員に「ご家庭での災害(地震・水害)への備えについて」のリーフレットを配布しています。各自の連絡先や避難場所の確認、ハザードマップによる自宅等のリスク確認、備蓄品の準備等を呼び掛け、災害が発生する前の準備の重要性を伝えています。
地震津波避難訓練
リーフレット、2021年配布
当社では、どんなに小さな火種であっても真因を究明し、有効な対策を横展開する取り組みや火災予防運動に合わせ、全社一斉の自主点検活動に取り組んでいます。そして、いざと言う時には被害を最小限にするため、職場の誰もが初期消火活動ができることを目標に、消火器、消火栓を使用した消火訓練及び自衛消防隊による消防車放水訓練や小型可搬ポンプ放水訓練などを行っています。
また、それぞれの工場・事業所で防火上の不備がないかお互いにチェックし合う防災監査に加え、保険会社と合同で防災監査を実施及び火災を起こさない為の防災基準を定め、海外工場を含めたグローバルな防災体制の構築に取り組んでおります。
自衛消防隊訓練
自衛消防隊訓練
火災避難訓練
火災避難訓練
スズキは、地震による津波対策として防潮堤の整備を進めるために、「浜松市津波対策事業基金」に対して、2014年9月末までに総額5億円の寄付を行いました。また、津波避難基地や緊急救援ヘリポート機能などを併せ持つスポーツ施設の建設に協力するために、2015年3月末までに「浜松市スポーツ施設整備基金」へ5億円の寄付を行いました。これにより浜松市防潮堤整備事業への協力は、「浜松市津波対策事業基金」と「浜松市スポーツ施設整備基金」を合わせて総額10億円となりました。
さらに、当社の工場や関連施設、取引先が多い静岡県西部8市町の地震津波対策として、2019年3月末までに総額3億4千万円の寄付を行いました。また磐田市へは防潮堤整備促進のため、2020年8月に28億円の寄付、2021年12月に竜洋コースの土地の一部を寄贈しました。
“火災事故を起こさない/起こりにくい/起こっても最速で回復できる体制”の構築を目指す「グローバルリスクマネジメント(以下GRM)」の取り組みを、リスク管理に知見を持つ東京海上日動火災保険株式会社および東京海上ディーアール株式会社と協力し、2022年度から開始しています。
GRMの取り組みによって上記3つのPlanとCheckを強化し、日々取り組んでいるDoとActionの実効性向上を図りながらPDCAサイクルを回しています。
2022年度はスズキ株式会社の国内主要工場や国内製造子会社の一部から取り組みを開始し、開発部門の施設、営業拠点、海外拠点、部品拠点に順次範囲を広げています。