当社はこれまで、得意とするコンパクトな四輪車をはじめとする様々な製品の開発と普及を通じて、各国の社会的・経済的な発展に貢献してきました。
1908年、創業者である鈴木道雄が、“母を楽にしてあげたい”との想いから織機を手作りしたことが、鈴木式織機製作所の創業に繋がりました。この“お客様の課題を解決したい”という想いがスズキの原点です。織機事業から始まり、複数の事業を展開してきました。
1909年創業当時の鈴木式織機製作所
1952年に発売した、自転車にエンジンを取り付けた「パワーフリー号」は、“楽に遠くまで走れる”とお客様に大変喜ばれ、当社の二輪の歴史がスタートしました。
その3年後には、日本初の量産軽自動車「スズライト」を発売し四輪事業に進出。その後、船外機、電動車いすの発売により現在の事業展開に至っています。
パワーフリー号
長らく二輪車と四輪車の両方を扱ってきたという特長を持つ当社は、二輪車の持つ利便性や経済性を活かして、世界中でモータリゼーションの機会をいち早く捉えてきました。そうしてお客様との接点を増やしながら、その国や地域の経済成長とともに、二輪車から四輪車への普及と拡大の道を歩んできました。
グローバル展開における特に大きな転機は、1979年の「アルト」誕生です。常識を破る低価格で発売したアルトは大ヒットとなり、日本の軽自動車の市場を築くことができました。これが契機となり、ゼネラルモーターズとの業務提携の実現や、インド国民車構想のパートナーに選ばれ合弁会社を設立するなど、海外進出という大きな飛躍に繋がりました。さらに、インドでの評判がハンガリーに伝わり、欧州への工場進出を果たしました。
インド・マルチ社でスズキ四輪車生産開始
これまでも“進出国・地域とともに成長する”ため、海外での現地生産を進め、その地域のニーズに合った製品・サービスを提供することにより、市場を拡大し、経済発展に貢献してきました。
インドでは、1983年に現地で四輪生産工場の稼働を開始し、現在は年間235万台まで生産能力を拡大しています。また、工場進出の歴史は取引先の皆様との歴史でもあり、一緒に成長しながら歩みを進め、強固な調達網と9割を超える高い現地調達率を築き上げてきました。さらに、販売網・サービス網の拡大にも取り組み、地方の農村部まで広がったネットワークはスズキ最大の強みとなっています。近年では、現地での研究開発も加速させており、優秀な技術者の採用を積極的に進めています。このように、裾野が広い自動車産業において、生産、調達、販売、開発を通じて現地でたくさんの雇用を生み出しながら、インドの経済成長に貢献しています。2023年3月末にはインド国内累計販売3,000万台を達成しました。2030年までに生産能力を400万台まで引き上げる計画です。
マルチ・スズキ社 グジャラート工場
当社のものづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」に基づいて生み出された製品は、コンパクトながら使い勝手が良く高性能で、お求めやすい価格を実現しています。多くの人々に移動の自由を提供することで、世界中で地域の生活を支えています。
日本では、特に公共交通機関が利用しにくい地方部において、使い勝手が良く経済性に優れた軽自動車が、生活の足としてなくてはならない存在となっています。さらに、軽トラックの荷台に食料品や地元の特産品、雑貨などの商品を陳列し、商店街に集まって販売する「軽トラ市」が全国の地方都市で毎年開催されています。少ないコストでたくさんのお客様を集めることができ、地方経済の活性化に貢献しています。
また、新興国では、当社が得意とするお求めやすく高性能なコンパクトカーが、初めて自動車を購入するお客様のニーズにマッチし、たくさんのお客様が自動車のある快適で豊かな暮らしを手に入れることができます。
軽トラ市の様子(静岡県浜松市)
2022年7月に量産を開始した、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置は、複雑で高価な装置ではなく、とてもシンプルな構造で部品代も抑えているという特長があります。水辺の清掃活動での雑談から始まった、誰でも思い付きそうで、誰もやらなかった装置のアイデアでしたが、「とにかくやってみよう」と積極的に挑戦し、試行錯誤を重ね、短期間で製品化に結び付けました。一人でも多くの人に使ってもらいたい、そのためには船外機の性能はそのままに、いかに簡単に、いかに安く作るか。「小・少・軽・短・美」に裏打ちされたスズキらしい創意工夫と想いを込めて作った製品を、楽しく使ってもらいながら、お客様と一緒に社会の課題を解決していきたいと考えています。
自動車産業が直面している諸課題の中でも、特に重視しているのがカーボンニュートラル達成に向けた電動化への取り組みです。カーボンニュートラルの達成には、走行時だけではない、総合的なCO2排出量の削減が求められており、車両の生産、電気などの燃料の精製の際に発生するCO2についても考える必要があります。
そうした考えの元、当社はCO2の総合的な削減には、EVに加えて、ハイブリッド車、CNG車、バイオ燃料車、さらには水素を使ったモビリティを、それぞれの地域・市場に合わせ組み合わせながら進めること、「マルチパスウェイ」による進め方が重要と考えます。
当社が得意とするコンパクトカーは、お求めやすさが支持されて多くの人々にご愛用いただいていますが、EV化による製品価格の上昇は、こうしたコンパクトカーのメリットを減らすことに繋がりかねません。人々の生活になくてはならない存在であり続けるために、「小・少・軽・短・美」の思想を活かし、コストと航続距離や装備をバランスさせ、お客様のニーズと利用スタイルに対応した、いわば適所適材のEVを開発し市場に投入していく計画です。
また、当社独自の取り組みとして、インド農村部に多い酪農廃棄物である牛糞を原料とする、カーボンニュートラルなバイオガス燃料の製造・供給事業へ挑戦しています。このバイオガス燃料は、インドCNG車市場シェアの約70%を占めるスズキのCNG車に使用することができ、実現すればお求めやすい価格で自動車の提供を続けることができます。インドのみならず、アフリカやASEANなどの新興国や、日本の酪農地域でも展開が可能な技術です。
Banas Dairy社バイオガス精製プラント
(このプラントを基にBanas Dairy社と当社が共同で4つのプラントを建設中)
これからも四輪車を中心に、二輪車、船外機、電動車いすなどのモビリティ事業を展開し、お客様の生活を支える製品・サービスを提供することで、社会課題の解決と企業の成長の両方を実現させ、人と社会に必要とされ続ける会社を目指します。
(2024年4月現在)
代表取締役及び関係役員が出席する「経営・業務執行会議」と「コーポレートガバナンス委員会」において、サステナビリティ(環境・社会・ガバナンス)に関する課題や方針、対策等について議論しています。特に重要な議題については取締役会に上程・報告します。経営と一体となった、実効性のある活動の推進を目指しています。
具体的な施策については、経営企画本部に設置したサステナビリティ推進の専門部署を中心に、社内各本部/グループ会社と連携し、社会課題の解決に向けた取り組みを社内横断的に推進しています。
2021年2月に発表した中期経営計画の策定に伴い、事業を取り巻く環境の変化を踏まえて2015年に特定した当社のマテリアリティの見直しを実施しました。
ステップ1 | GRIスタンダード、SASBマテリアリティ・マップなど、ESGガイドラインが定める各種指標を参考に、事業リスクや課題項目を抽出。 |
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ステップ2 | 経営企画部門を中心とするサステナビリティ関連部門において中期経営計画で取り組む課題との整合性を確認。 |
ステップ3 | ESG投資家や環境NGO、ESG評価機関とのエンゲージメントを通じて、ステークホルダーから見た重要度を検討し、その妥当性や網羅性を確認。 |
ステップ4 | 経営会議において課題項目の妥当性や網羅性を審議しマテリアリティを特定。重要度については課題の性質によって整理し開示する方法を確認。 |
ステップ5 | 取締役会の審議、承認を経て決定。 |
特定したマテリアリティは、社是「お客様の立場になって」を念頭に、課題解決によって社会やお客様にどのように貢献していくかを意識し、「事業を通じて解決する課題」とそれらを支える「事業基盤の強化のための課題」に大きく分類しました。
特定・整理したマテリアリティをスズキのサステナビリティ方針の基本として、今後の取り組みを推進していきます。また、マテリアリティは事業を取り巻く環境の変化に応じて、項目の見直しを定期的に実施していきます。
スズキグループはSDGs※を支持し、事業活動を通じて目標達成に貢献できる課題について、積極的にその責任を果たしていきます。
環境に配慮した小さな車の開発・普及や、新興国における雇用の創出など、スズキはこれまでもSDGsに貢献してきました。今後もスズキの特長を活かした事業活動を通じて、収益を伴いながら社会課題の解決に取り組んでいきます。持続可能な社会への貢献と収益成長の両立を目指します。
主なステークホルダー | 考え方 | 対話・コミュニケーション方法 |
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お客様 |
お客様の満足のために人びとの暮らしに役立ち、心を満たす真の「価値」ある製品づくりのため、時代の足音に耳を傾け、人の心に寄り添いながら、技術と真心を持って挑み続けます。また、迅速で確実、気持ち良い販売・アフターサービス活動を心がけ、お客様の満足のためにベストを尽くします。 |
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お取引先様 |
共存共栄を目指して「価値ある製品づくり」のために、お取引先様と対等な立場で相互に協力し、信頼関係を構築するとともに、法令遵守・人権尊重・環境保全についての取り組みを実践し、パートナーとしてともに繁栄できる関係を構築します。 |
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従業員 | 働きやすく、働きがいのある職場づくり従業員が自己の向上に努め、常に意欲的に前進することができるよう、次のことに取り組みます。
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株主・投資家の皆様 |
企業価値の向上を目指して迅速かつ適切、公平な情報開示を推進していくとともに、株主・投資家の皆様との対話に努め、経営基盤の強化と企業価値の向上に取り組みます。 |
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地域社会 |
地域に愛される企業を目指して積極的な地域社会とのコミュニケーション活動や社会貢献活動により、地域の一員としての責務を果たし、地域社会の発展に貢献します。 |
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環境 | 地球環境保全への取り組み地球環境保全への取り組みは、経営上の最重要課題であることを認識し、持続的発展が可能な社会の実現に向けて「スズキ地球環境憲章」に基づき、すべての事業活動及び製品における環境保全を推進します。 |
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主なステークホルダー | 取り組み例 |
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お客様 | お客様相談室に寄せられたお申し出は社内各部門に伝え、商品開発、製造、品質、販売及びアフターサービス等の改善や向上につなげています。これらの情報は、重要度に応じて即時に社内展開する体制づくりも行っています。また、集められた情報を精査することにより、お客様の潜在的な要望を抽出してまとめ、担当部門に情報提供する場合もあります。 |
お取引先様 | スズキのお取引先様を対象に毎年1回「購買方針説明会」を開催し、スズキの政策や商品・生産計画を共有するとともに、それらに基づく購買方針を伝え、相互理解に努めています。 |
従業員 | 2022年の春闘から、会社の発展に向け、労使が同じ方向を目指して、相互に意見をぶつけ合い、議論を重ねるやり方に変更しました。労組三役と社長・副社長との情報交換会を毎月実施し、その様子はすべての従業員に発信されています。 また、スズキ株式会社のすべての本部・工場・拠点に社長が直接訪問し、法令遵守や新たな業務の取り組みについて従業員と意見を交わす職場対話を実施しています。 |
株主・投資家の皆様 | 四半期ごとの決算アナリスト説明会に加え、インベスターズ・カンファレンス等への参加や、成長戦略説明会、技術戦略説明会、新車発表会等へのアナリストの招聘も随時、実施しています。IRミーティングでは投資家からの要望に応じ、対面またはオンラインツールも活用した柔軟な対話を積極的に実施しています。 また、個人投資家向け説明会も定期的に開催しており、株主総会後には、スズキ歴史館の見学会を2008年より毎年開催しています(新型コロナウイルスの感染症拡大防止のため、2020〜2022年の見学会は中止としました)。 |
地域社会 | 国内の四輪組立工場では、社会科校外学習の一環として、工場見学の受け入れを行っています。また、地元の皆様と情報交換を行う交流会や、従業員とその家族及び地域住民の方々との親睦を図る秋祭りを通じて、地域社会とより深い相互理解を図っています。 |
当社はESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを強化し、その情報を分かり易く開示することを心がけ、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを促進し、持続的な企業価値の向上を着実に進めて行きます。
ロンドン証券取引所グループのFTSE Russellが開発したESGの観点から優れていると判断された企業の株式で構成された指数で、ESGに着目した投資ファンドや金融商品の作成、評価に広く利用されています。
FTSE Russellが開発した日本企業に特化したESG投資指数で、世界最大規模の年金運用機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資にあたり採用しています。
FTSE Russell社が開発したESGに主眼を置いた指数で、各セクターにおいて相対的に環境、社会、ガバナンスの対応に優れた日本企業のパフォーマンスを反映し、GPIFがESG投資にあたり採用しています。
SOMPOアセットマネジメント株式会社が設定するインデックスで、複数の年金基金・機関投資家に採用されている運用プロダクト「サステナブル運用」に用いられています。
https://www.jpx.co.jp/markets/indices/carbon-efficient/