スズキは、スズキ従業員を代表するスズキ労働組合と、「相互信頼」に基づく、良好な労使関係を築いています。2023年度末時点の組合員数は17,296名で、管理職や労働協約で定めた非組合員を除いた正規従業員の組織率は100%です。
労使交渉については、年1回の春季労使交渉(いわゆる春闘)の場が主となっていましたが、昇給・賞与に主眼が置かれてしまい、それ以外の課題については、労使間での情報共有・意見交換が尽くされておらず、お互いの主張を伝える形式的な場になりがちでした。こうした状況を踏まえ、労使信頼関係の根幹である職場単位での上司・部下コミュニケーションを活性化させ、層別で議論をしていくことを目指し、2022年の春季労使交渉では、これを実現させるための施策を実施しました。2023年以降も継続して取り組んでおります。
会社側からは将来に向けての取り組みを伝え、組合とはその施策に対して取り組むべき課題を共有し、ベクトルを合わせながら解決に向けて話しあう「対話の場」としました。
組合員だけではなく、管理職も一体となって労使交渉に臨むことが効果的と考え、管理職を主なターゲットとした社長メッセージを交渉に合わせて発信。このメッセージを含めた対話内容を労使全体に向けて情報発信しました。
職場の課題はまず職場で解決すべく、部門単位の「労使懇談会」を定期的に開催し、コミュニケーションを活性化させています。職場だけでは解決が難しい課題は、毎月1回開催する「支部労使協議会」、「中央労使協議会」の場で3月の春季労使交渉まで継続的に議論することで、春季労使交渉を労使議論の集大成の場とすることを目指しています。
開催頻度 | |
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中央労使協議会 | 月1回 |
支部労使協議会 | 月1回 |
スズキ従業員を代表するスズキ労働組合では、スズキ労連(スズキグループの労働組合が加盟するスズキ関連労働組合連合会)と連携し、全組合員を対象とした意識調査を実施しています。この調査を通じて内側から見たスズキグループ全体の強みと弱みを把握することによって、自発的なより良い会社・職場づくりにつなげるため2018年から毎年実施しています。調査結果で見えた課題は組合員に報告し、組合活動へ反映すると同時に労使で共有し、職場課題の解決に向けた労使一体の活動につなげ、労使関係を安定的に維持しています。
スズキには、国内外120社のグループ企業(製造会社・非製造会社・販売会社)があります。スズキは、120の企業がそれぞれの国・それぞれの地域で、そこに住む人々・社会・お客様から、信頼される企業であり続けたいと考えています。
スズキは、海外企業の労働組合役員と人事労務担当者を受け入れ、労使間の信頼関係とコミュニケーションの重要性、公平・公正な人事制度の必要性等について研修をしています。また、スズキは、スズキ労働組合とともに、国内外のグループ企業とのグローバルな人財交流を進めることにより、120社約7万人の従業員が創造性豊かに活き活きとして働く闊達な職場風土と、安定した労使関係を構築できるように取り組んでいます。
効果的なコミュニケーション、重要な意思決定への従業員の参加、および様々な従業員福利厚生プログラムを通じて、安定した友好的な労使関係の確保に努めています。社長が主導し、様々な職位の従業員と定期的に双方向のコミュニケーションを行うことで、経営状態全体について常に情報を提供し、意見交換のための強力なプラットフォームを提供しています。
ミーティング | 開催頻度 |
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社長と労働組合代表者とのミーティング | 月1回 |
生産・人事担当上級管理職と労働組合代表者とのミーティング | |
生産・人事部門と労働組合代表者とのミーティング | |
生産・人事部門と現場従業員とのミーティング | 継続的に開催 |
専門ヘルプデスク「サマダン」による現場従業員からの苦情聞き取り | 週1回 |
結束の自由と団体交渉を推進しています。全部で3つの労働組合がありますが、団体交渉を認めており、各組合とも積極的に連携しています。当年度は、マネサール車両生産工場で労働組合の代表者を選出する選挙が円滑に行われました。
業界トップクラスの手当と、業界平均を上回る給与を提供しています。報酬方針は男女の差別なく、生産性の向上と事業目標の達成を指標として、すべての階層の従業員を対象とした体系化された成果報酬体系を導入しています。
発展に貢献して頂いた社員を大切にしています。前年度の税引き後利益の1%を従業員の福利厚生のための基金として拠出し、住宅ローン補助などの福利厚生施策、従業員の子どもの教育支援、従業員住宅の共用インフラ整備、従業員とその配偶者の退職後医療給付などの社会保障施策に活用しています。ハリヤナ州ダルヘラで行われている住宅プロジェクトでは、これまでに275戸の住宅が従業員に引き渡されました。
ダルヘラ住宅協会において従業員に引き渡されたアパート
マルチスズキのアパート
従業員に高等教育プログラムを提供するために様々な学術機関と提携しています。このプログラムでは、現場従業員は3年間の高専コースに参加することができます。高等教育プログラムを修了した従業員は、より高い職責に就くための昇進が検討されます。
コース | 対象者 | これまでの高等教育プログラム修了者数 |
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高専コース(機械) | 現場従業員 | 638名 |
従業員の家族とのつながりや福利厚生のために、従業員の子供のための専門家によるキャリアカウンセリング、ファミリーデー、家族のための工場見学などのイベントを用意しています。従業員家族との関わりでは、社内報や特別な日に発信される社長メッセージを通じたコミュニケーションが重要な役割を果たしています。
ジェンダーの多様性を推進し、すべての人に平等な機会を提供します。女性従業員の活躍を支援するため、様々な福利厚生制度が設けられています。当年度、生産現場に初めての女性従業員を配置しました。インドにおいて、特に生産現場に必要な技能を持つ女性従業員が限られていることを考慮すると、この取り組みは重要な意味を持ちます。ここ数年、女性が現場での技能を身につけるための研修を実施しています。
派遣労働者を含む従業員から報告された苦情に対処するため、専門ヘルプデスクによる苦情聞き取りを行っております。従業員の問題に対処するために、定期的な聞き取り実施をしております。
産学連携議会(IAC)が主催する「コーポレートアワード2024」の民間部門で、「未来の人材育成」における先駆的な取り組みが評価されました。
スズキは、スズキ従業員を代表するスズキ労働組合と、相互信頼に基づく良好な労使関係を築いています。労働組合の目的の一つに、従業員の雇用の安定と働く環境(労働条件)の維持改善があり、この目的を達成するには会社の安定的な発展が不可欠です。企業活動の成果配分としての給与・賞与・労働時間等に関しては、労使交渉を通して会社と労働組合という立場で議論しながら、会社を安定的に発展させようとする基本的なベクトルを共有し、決定しています。
なお、最低賃金の保証については、最低賃金に関する協定を毎年労使で結んでいます。
(2024年4月時点)
最終学歴 | 月給(円) | 最低賃金との比較(%) | |
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高校 | 201,000 | 126 | |
高専(本科)事務職、技術職 | 223,000 | 140 | |
高専(専攻科) | 251,000 | 157 | |
大学 | 一般事務職 | 211,500 | 132 |
事務職・技術職・営業職 | 251,000 | 157 | |
大学院(修士) | 273,000 | 171 |
2021年より、社長自らが社内全職場(本部・工場・拠点)の現場へ足を運び、意見交換会を実施しています(2023年度実績:24本部、39か所)。社長自らが従業員に直接思いを伝え、また従業員は日々の困りごとを打ち明け、諸問題を共有し、協力一致して解決に取り組んでいます。特に若手から中堅の従業員にとっては、自分の思いを自分の言葉で社長へ直接届けることができる機会となり、また社長のみならず経営陣が現場の声に直接耳を傾け、柔軟かつ素早い改善に取り組んでいます。
また2023年より、社内ホームページで、打ち明けられた困りごとへの対応状況を閲覧できるようにし、現場の声を吸い上げて終わりとせずに、継続的に対応していることをフィードバックしています。
遠隔地から入社した従業員のために独身寮があります。また、各事業所で勤務(出向含む)する従業員のために、地域によっては社宅があります。
寮や社宅がない地域の各事業所や代理店で勤務(出向含む)する従業員のために、会社が一般住宅を借り上げ、これを社宅、寮に準じて入居いただく準社宅があります。
従業員の健康増進と体力増強及び余暇の善用に供するため、体育施設を設置しています。本社近郊に夜間照明完備の総合体育施設(スズキグランド、スズキ体育館、トレーニングルーム、テニスコート)があります。磐田工場近接地にグランドがあります(野球、ソフトボール、サッカーなどに利用されています)。
従業員の給食施設として、本社、各工場及び寮に食堂があり(一部除く)、カフェテリア方式で、一品料理、定食、カレーライス、めん類、などが喫食できます(寮は主として定食のみです)。本社食堂では、朝食や喫茶営業も行い、焼きたてパンや淹れたてコーヒー等が提供されます。
2024年1月15日から、本社社員食堂で新しいインドベジタリアン料理の提供を開始しました。この料理は浜松市でレストラン事業などを展開する企業様にご協力いただいたもので、味の開発にはインド出身のスズキの従業員も協力し、現地の味と同等にしています。本社以外の拠点では、予約制で提供を行っています。
従業員の貯蓄奨励を目的とした財形貯蓄制度があり、55歳未満の従業員が加入できます(一般財形・財形年金・財形住宅の3種類があります)。
従業員または家族(従業員の配偶者または子供)が車両(スズキ製品新車)を購入する場合、車両価格に対し一定の割引を受けられる制度です(一部除外機種があります)。また、購入資金を必要とするときは資金の貸付を受けることができます。
従業員持株制度は、毎月の給与から一定の金額を天引きして会社の株式を継続的に購入する制度で、1973年に従業員の福利厚生制度の一つとして導入しました。毎月の拠出金額に応じて無理なく株式が取得でき、財産づくりを支援するため、拠出金に会社から奨励金も付与されます。福利厚生のみならず、従業員が自社の株を持つことで、会社業績の向上が株価を押し上げ、その結果として自身の資産価値が増大するというモチベーションアップが期待でき、経営参画意識の醸成にもつながります。
また人的資本投資の取り組みの一環として、2023年4月より従業員持株会の奨励金付与率を従来の5.6%から100%(奨励金額上限10,000円)へ引き上げました。魅力的で加入しやすい制度とすることで、さらに多くの従業員が持株会へ加入することで資産形成を後押しするとともに、経営参画への意識を向上していきます。
今後も福利厚生制度を拡充していくことで、従業員が一致団結し、一丸となって「2030年度に向けた成長戦略」を達成していくとともに、人と社会に必要とされる会社を目指します。
年間 | 変更後 | 変更前 | ||
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給与 | 賞与 | 給与 | 賞与 | |
奨励金支払い対象となる積立額上限 | 120,000円 (10,000円/月) |
― | 600,000円 (50,000円/月) |
400,000円 (200,000円×2) |
年間奨励金額上限 | 120,000円 | ― | 33,600円 | 22,400円 |
勤務地・環境にかかわらず、社員が公平に福利厚生を受けられること、並びに多様な社員一人ひとりの嗜好を幅広く支えるため、会社が設定した福利厚生メニュー(両立支援、健康支援、能力支援、余暇支援、生活支援、等)の中から社員が自由に選択し、付与されたポイント(カフェテリアポイント)を上限に、補助を受けることができる仕組みです。
会社が設定したメニュー(旅行、レジャー、グルメ、スポーツ、ショッピング、学習、等)を会員優待価格で、制限なく利用できるサービスです。さらにカフェテリアプランで認められているメニューに関しては、そのポイントを併用して利用することができる仕組みです。
本社や複数の事業所で、キッチンカーの営業を行っています。クレープやかき氷などのスイーツやドリンクといったカフェメニューや、ハンバーガー・プレートランチ・スープなどランチメニューもあります。