スズキは、「お客様の立場になって、価値ある製品を作ろう」を社是の第一として掲げており、お客様が本当に必要とするものを、スズキらしいやり方で提供する過程において知的財産の創出を奨励し、これを活用することを基本としています。
これらの知的財産戦略の中核となるのは、スズキの思想・文化の根幹であり、カーボンニュートラルにも貢献する「小・少・軽・短・美」です。従業員一人ひとりが「小・少・軽・短・美」の行動理念に基づき、お客様や社会からのニーズの多様化に対し、知恵と工夫で「スズキらしい」「そう来たか」と思っていただける独特な思想で技術開発・設計開発を行い、今後も知的財産を生み出してまいります。
2022年3月に、新たに「知的財産推進会議」を設置しました。本会議には、取締役および技術開発、設計開発、商品企画、経営企画、各事業部、知的財産などの各部門の執行役員・部長が出席し、知的財産戦略について全社的な議論を行っており、今後もその活動を継続していきます(2022年3月~2025年8月までの間に26回実施)。
また、本会議で議論・決定した内容を経営会議および取締役会に報告し、承認を受けることにより、適切な知的財産ガバナンス体制を整え、知的財産戦略の実行を推進しています。
2025年2月に公表した中期経営計画「By Your Side」のもと、設計開発部門によるエネルギー極少化に向けた開発現場に知的財産部員が入り込み、現場の「ひらめき」「発想」を競争力のある特許権の形に落とし込んでいきます。
特に、2024年度より設計開発部門における発明創出の推進役を各部門の管理職(管督級)約80人に担っていただき、設計開発部門と知財部門がより一層連携して発明発掘を行っています。また、年度初めに設計開発部門と知財部門の部門長によるヒアリングを行い、各開発領域における知財戦略を策定し、これを実行しています。
2023年4月に知的財産に関する報奨制度を改定し、知的財産の創出に対して従業員一人ひとりが「褒められた」「認められた」「高く評価された」と実感してもらえる内容としました。特に、スズキらしさである「小・少・軽・短・美」を体現するものとして各本部長が自ら選出した特許の発明者を全社イベントで社長が直接表彰したり、発明者と社長、役員らとの座談会を開催し、その様子を社内イントラで公開するなど、知的財産創出に対するインセンティブを強化しました。
なお、今年度の社長表彰の対象は、次項「小・少・軽・短・美の実績」で紹介する9件となります。
また、当社の報奨制度では上記のほかにも秘匿発明報奨やネーミング報奨などバリエーション豊かな制度で知財創出を後押ししています。
秘匿発明報奨とは、公開には適さないノウハウ、例えば工場内の生産技術に関する発明などについては他社による権利侵害を発見しづらいため、出願せずに社内ノウハウ化するものがありますが、そういった発明も報奨の対象としています。
また、一般的に知的財産の報奨はエンジニアが対象となることが多いですが、優れた商品名を対象としたネーミング報奨を設け、広く全従業員から案を公募しています。
(発明者と社長・役員との座談会の様子)
25年4月開催時は発明者13名、社長・役員12名が参加
発明者が自分の発明内容を説明。補助員として知財部員が同席
和やかな雰囲気のもと、発明時の工夫や苦労話を社長や役員が笑顔で引き出す
新年度大会における表彰式の様子
<特許のポイント>
バッテリパックの前下方にバッテリガードを配置することで走行中の路面突起物からの衝撃に対する耐久性を向上させつつ、小型化および軽量化を実現した点。
<スズキらしさ>
小:省スペース
軽:重量増大を回避
<特許のポイント>
BEVのジャンクションボックス後方に位置する狭小空間内に低電圧ケーブルを配索することにより、車両の前方衝突時に最低限のプロテクタで低電圧ケーブルを保護可能とした点。
<スズキらしさ>
小:省スペース
少:部品点数増加を抑制
軽:重量増大を回避
<特許のポイント>
BEVに搭載される電装品コネクタの周辺部品との接触を回避するために、簡易的で高強度のパイプ状プロテクタにより確実なコネクタ保護を実現させた点。
<スズキらしさ>
小:省スペース
少:部品点数増加を抑制
軽:重量増大を回避
<特許のポイント>
自動二輪車用フロントフェンダにおいて、前方からの走行風をブレーキディスクに導いた後、フロントフェンダ外側後方へスムーズに排風することで、追加部品なくブレーキ冷却機能を向上させ、かつ、外観を良好なものとした点。
<スズキらしさ>
少:部品点数増加を抑制
美:外観性を向上
<特許のポイント>
鞍乗型車両のメータ上方に装着した携帯端末機器の接続ケーブル中途部を車体側に支持することでケーブルの保持安定性を向上した点。
<スズキらしさ>
小:省スペース
美:外観性を向上
<特許のポイント>
自動二輪車のサイドカウル後端をガイドエッジ状に形成することで走行風の巻込みを軽減し、空力特性を向上できる点。
<スズキらしさ>
少:燃費改善
<特許のポイント>
BEVの冷却水リザーブタンク下部に後ろ上がりの傾斜面を設け、車両の前方衝突時にリザーブタンクが後方移動した際、後方に位置する高電圧ケーブルによりリザーブタンクを上方に逃がすことで追加部品なく高電圧ケーブルを保護できる点。
<スズキらしさ>
少:部品点数増加を回避
軽:重量増大を回避
<特許のポイント>
自動二輪車のクイックシフト装置において、シフトロッドに対して一方側にシフトセンサおよびシフトペダル操作部を集約配置することでクイックシフト装置の小型化を実現でき、外観も良好なものにできた点。
<スズキらしさ>
小:省スペース
美:外観性を向上
<特許のポイント>
車載ディスプレイオーディオの画面レイアウトを簡素化し、機能別タブを画面左右両端に振分けて配置することで操作性が向上し、グラフィックスの美観も向上できる点。
<スズキらしさ>
少:少ない操作手順
美:グラフィックスの美観向上
スズキの主要市場であるインドにおいて特許出願を強化しています。最も多く権利獲得している日本(約4,400件)に次いで、現在、約1,800件超の特許権を獲得・維持しています。
ベンチマークの一環として事業に関係する社内外の最新の特許関連情報を閲覧しやすい形式で社内へ提供する※ことで技術情報としての閲覧を促し、モノづくり・コトづくりをサポートしています。
※ 原則毎週1回
知的財産教育にも力を入れており、特許法※1および著作権法※2を中心に階層別に教育を行い、全社において知的財産の保護および活用の重要性を浸透させています。